季節が君だけを変えた
5月に入った──ゴールデンウィークにリー君の車で東京に行こうというプランが立てられた。親父さんが乗っていた車を100万で購入したらしい。色んなバイトを掛け持ちして、1年半で100万を貯めた彼を、心から尊敬している。バイトなど選ばなければ沢山ある。『キツイ』『キタナイ』仕事を率先してやってきたらしい。
僕は思った。例え暴走族のリーダーでも、1番になる奴はやっぱり何か違うんだなと。とてもじゃないけど、僕には真似の出来ない事だと。
そんな僕は一体何が出来るのだろうか──ウジウジと女の事で溜息ばかりついていた2か月だった。そのウジウジした中でたどり着いた結論は、『愛とはただ信じる事』というだった。恋愛の歌に良く使われそうではあるが、シンプルにそういう事なんだと。だが、未熟者の僕は出した結論に対してすぐに揺らぐのだ。結論が出たからと言って心に刻まれるほどのものではなく、相手の気持ちがどうしても気になってグラグラと揺らぐのだ。つまり、“信じる事”が出来ないのだ。それが出来ないという事は、彼女を本当に愛してはいないという事になる。
「近ちゃんはん!」
「……」
「近ちゃんはんって!」
「何かね? エドワード君」
「いや、もはや日本人ですらないやん」
2限目の休み時間──昨晩は5人で朝まで遊んでいた。と言っても、リー君の家でただ喋っていただけだが……。女っ気など一切ない野郎のみの夜だったが、本当に楽しかった。
「みんな、流石に寝てるね」
「ほんまですわ。レプはんなんか登校してからずっと寝てますやん」
僕は江戸やんの席とリー君の席を見た。2人とも机に倒れ込むように寝ていた。
「ところで、たえこは何故起きてる?」
「たえこて。新しいタイプでんな。実は、近ちゃんはんに伝えておいてくれと言われた事がありまして」
館林君のあだ名は、仲間入りした瞬間に、僕が『たて』と命名したが、毎回違う名前で遊んでいる。
彼が言うには、行きつけの居酒屋に付き添いできてくれとの事。一緒に行けば分かると言った。僕は、そういった得体の知れない話しには乗らない男だ。だが、あまりにしつこく彼が誘うので折れた。全て奢りだと言うし、僕にとって悪い話しではないとゴリゴリに押された。まぁ、家にいても仕方がないし、彼といるのは嫌いじゃない。
「ほなら、今日の夜7時にY駅に来ておくんはれ」
「わかった。おやつは?」
「そんなんもってきなはんなや。笑われまっせ」
「オーケーです」