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「なんとか林て誰?」
「いや、江戸やんが面白いって言ってたやーつ」
「やーつとかすでに面白いんだけど」
「ホームルームでお笑いやる奴やな。何か胡散臭い奴でちょっとウザいな」
リー君は、極細の眉毛がへの字になるぐらい苦虫を噛み潰した顔をした。
とりあえず、リーダーであるレプの意見を聞こうと思った。
「てかさ、仲間にしてくれとか何か違う気がするんやが」
「そうや。俺もそう思う。その辺が胡散臭い」
「近ちゃんは喋ったんだろ? どう思ったの?」
江戸やんの質問にどう答えていいか分からなかった。何故なら、彼の名前で遊んだ事、それに対して、鋭いツッコミだったなぐらいしか残ってなかったからだ。
「いやいや。黙っちゃったよ。仲間にしてくれって言われたんだろう?」
ぶっちゃけた話し、どうでもよくなっていた。彼を仲間にすれば、楽しいのは容易く想像付くが、そもそも“仲間”って何なんだろう。
「あかんわ。近ちゃん、キャパオーバー」
「いやいや、おかしいだろ、レプ。どう思ったのと聞いただけでキャパオーバーとか」
「近ちゃんは、多分、“仲間”の定義について考えてるんやと思う」
「それな! レプ、仲間ってなんやろ?」
「それは、暴走族の元リーダーに聞いたほうが良いな」
「待て待て! お前急やねん。フリが」
江戸やんもレプも、頭を抱えるリー君を見て爆笑している。僕もそれに誘われるように笑った。要はこういう事なんだと思った。“仲間”なんてものは。
「めっちゃおもろそうな話ししてますやん。わても仲間に入れてくんなはれ」
教室の前の廊下で腹を抱えて笑っていたら、噂の彼が輪に入ってきた。
「あっ! 館なんとか君や!」
「あんさん、名前でボケるん好きでんな。館林ね。いい加減覚えましょう」
「お前かい! 仲間になりたいだの面倒くさい事言っとるんは」
リー君が軽く睨みを利かせたが、彼は白目をむいて天を仰いだ。
「あかん。見たら石になる」
「なるか!」
彼とリー君のやりとりがツボにハマった。レプも江戸やんも爆笑していた。当の本人のリー君も腹を抱えて笑っていた。