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「近本はんに権限ありまへんのんか?」
「ないない。雑魚ですから」
「近本はんで雑魚なら、わてなんかどないなりまんねん」
僕は、正直に自身の現状やメンバーの事を話した。
「何やて? おたくら、やりまくってんちゃいまんのんか?」
「どうせ藤川やろ。下らん噂流してんの」
「でも、その話しがほんまやったら、逆にもっとメンバーに入れてもらいたいたくなりましたわ」
「いや、干上がってるから。レプ以外は」
「レプて誰だんねん?」
彼は、大阪でも河内の出身なのか、同じ関西弁でも少し癖があった。
とりあえず、あだ名でしか覚えていない事を館林君に伝えた。
「まさかとは思うけど、天然でっか?」
よく言われるワードだ。僕自身は、普通に受け答えをしているつもりだが、相手にとってはそうは感じてないらしい。
「とにかくや、メンバーに入れてもらえるように、そのレプはんに話ししておくんなはれ」
「わかった。館森君」
「いや、館林ね。“林”の方ね」
「うん。二階堂君」
「いや、もう全く別人やから。そこまでいくと」
そういうと、彼は教室から出ていった。その入れ替えに藤川達が教室に戻ってきたが、僕は目を逸らしたら負けだと思ったので彼女達を目で追った。金魚の糞の最後尾にいた背の大きな女が、僕にまたお辞儀をした。僕も釣られてお辞儀をしたら、彼女は、右手で口を隠して笑っていた。何故笑ったのか気になった。そして、敵対する僕に何故頭をペコリと下げたのか──。僕はわざともう一度彼女を見た。すると、また彼女がお辞儀をしたのだ。よく考えてみると、彼女を見た時彼女もこちらを見ていた事になる。
『2度ある事は3度ある』よく耳にする言葉だ。僕は、もう一度彼女を見た。
『……』
彼女は右手で小さく手を振っていた。完全に僕に向けてのものだった。藤川ともう1人の金魚の糞は、お喋りに夢中で、背の高い彼女はその中に入っていないようだ。僕は、何故か変に照れ臭くなって教室から出ていった。
「おっと、近ちゃんお目覚め?」
「おうおう、僕を置き去りにしたな」
レプ達が食堂から戻ってきた。
「いや、後から来るかなと思って」
「それはそうと、お前等が食堂行ってる時、なんとか林って奴が話しかけてきたぞ」