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彼女達は教室から出て行き、レプ達も食堂に行ってしまった。教室の中では、クラスメイトがお弁当を食べたり、各グループに分かれて楽しそうに話しをしている。
いつもの病気が久々に始まった。最近は鳴りを潜めていたのに、藤川のせいで発動してしまったようだ。周りは賑やかなのに、まるでテレビの音を消したみたいに何も聞こえないのだ。そして、見るもの全てがモノクロに映り、周りからは僕が見えていないんじゃないかといった不安感に苛まれてしまう。なんとも言えない倦怠感の中、立ち上がり、食堂に向かおうとした。
「近本はん! 近本はん!」
微かに自分を呼ぶ声が聞こえた。僕は嬉しくてなって振り返った。
「近本はん! 何回呼ばしまんねん」
館林勇──クラスの人気者だ。ホームルーム等で、漫談とか1人コントを聞かせてくれる楽しい奴だ。鼻が高く、彫りも深い、映画俳優のような感じだ。外国人とのハーフなのか分からないが、日本人離れした顔立ち。僕は、彼の名前は辛うじて知っていた。ちなみに、レプの名前は覚えていない。
「これはこれは。横林君」
「いや、館林ね。基本をぶちかましなんな」
「いやいや、なんのようだね?」
「何でどっかの社長風なべしゃり?」
実は、密かに彼の漫談、1人コントが結構好きだった。この学校で、唯一仲間と喋る以外で楽しい時間だ。かなりの男前なところがまたギャップというか、彼のお笑いに素敵なスパイスとなっている。
「あれやって! エロビデオをレンタルする時の顔」
「いやいや、やった事ないですやん。ていうか、どんな顔や」
「しれっとした顔」
「だから、ホームルームでやった事あった? いや、そんな事より話しありまんねん」
「何かね?」
「だから、社長風やから。いや、おたくらの仲間に入れて欲しいんですわ」
「やだ」
「やだて。即答過ぎてショックな気持ちがまだ来ないわ」
どうやら、派手に遊んでいるという噂を聞き、自分も便乗したいとの事。分かりやすい男だ。だが、その噂はあくまでも噂である。僕は説明するのも面倒だったし、リーダーのレプの許可も得ていないので、勝手に決められないし、仲間の意見も必要だと思った。