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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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再会

 

『間を空けよう』──別れ言葉の常套句。実際に、その後に復縁してめでたしめでたしとなったケースなどない。この世のどこかにそういう事例はあるかもしれないが、少なくとも僕の周りでは聞いた事がない。その真綿で首を締めるような言葉を、2日前に愛する彼女から告げられた。なんの前触れもなくだ。当然、理由を聞いたが、答えになっていない答えだった。『近すぎて怖くなった』であるとか、『好きすぎて耐えられない』とか、僕の頭では到底理解出来ないものだった。『他に好きな人が出来た』であるとか、『なんか冷めた』なら、痛恨の一撃レベルでピヨピヨ状態だろうが、納得はいくし、次に進める。だが、彼女の台詞は、『間を空けよう』だった。さらに、僕を悩ませているのは最後の台詞だ。


「まだお互いが好きなら、9月5日、例の公園で会おう」



 全く意味がわからない。『お互いが好きなら公園で会おう』ってどういう意味ですか? マジでわかりません。『9月5日』って、僕が告白して付き合った日だけど、半年も先の話しだ。僕は彼女に言った。



「その間は電話もしないの? 」


「……うん。しない」


「半年もあるけど」


「あるね……」


「あるねって、まるで他人事やん……」


「……」


 その後、沈黙に耐えられずにその場を後にした。あの雰囲気に耐えられるほどアイアンマンではない。ただ、自分ではもう少し強い男だと思っていた。女にフラれたぐらいでメソメソするような男ではないと思っていたから、少しガッカリしていた。まだ2日しか経っていないのに、1分1秒が永遠に感じた。半年後なんて、とてもじゃないけど無理だと思った。半年後に、あの公園で彼女が待っている保証など何処にもないわけだし──。



 感じた事のない倦怠感に包まれ、僕は高校生活最後の年の最初の日を迎えた。この2日間、まるで疲れが取れない。例えるなら、プール授業の次の現社ぐらい重い。眠いんだけど眠れない。情けない話しだが、体重が2キロ落ちた。2日で2キロも減るってどんだけだよと思ったが、全く食欲がなく、タバコばかり吸っていた。本当なら、クラス替えに心踊らせながら、満開の桜の門をくぐって新しい教室に向かうはずなのだが、そんなことより、1日の過ぎるスピードが100倍速にならないかと心の奥底から願っていた。



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