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僕等は、休み時間になるとレプの席付近でダベっていた。本当に何て事ない会話をしているだけだ。『今日、食堂で何食う?』とか、帰りに例の喫茶店でお茶をしばく約束とか、たわいもない話しで盛り上がっていた。
「おい! 李、お前ほんまがっかりやな。よりにもよって、こんな奴らと連んで」
「やかましいわ。お前よりマシや。俺等の事はほっとけ」
同じクラスの藤川安奈だ──確か、りーくんとは同じ暴走族に所属していたと聞いた。僕はこの女が嫌いだ。威圧的な態度、何人か引き連れて、まるで『私が女王よ!』と言わんばかりだ。確かに顔は綺麗だが、僕は大嫌いだ。そして、後ろの金魚の糞みたいな女達。こいつらに関しては、どういう理由でくっついているのかを知りたい。どうせクソメンタルの持ち主で、己の事しか考えない女王と同じで、『自分大チュキでちゅ』女に違いない。完全主観ではあるが。
「おい! そこのロン毛! お前が1番ウザい!」
「え? 俺の事?」
藤川安奈は、江戸やんを指差し、無理矢理般若のような顔で罵倒した。
「はいはい。とりあえず、食堂行こうぜ! 江戸やん」
「おっおう」
レプは江戸やんの右腕を掴み、りーくんと教室を出た。僕は頭に血がのぼって、思いつく限りの禁句を浴びせてやろうかと思ったが、リーくんの友達でもあるし、ぐっと堪えた。そして、そのまま自分の席へと向かい、寝たフリをした。かと言って、いきなり寝たフリも不自然ではあるが、僕自身も元彼女の事でまだまだモヤモヤは続いている。彼女達を相手にする暇もエネルギーもないのだ。
「近本! 寝たフリすなや」
背中から気配を感じていた──まだ何か言い足りないのか僕に絡んできた。彼女と話しをするのは初めてだ。同じクラスになった事はない。それなのに、最初の一言目が、呼び捨てで、『寝たフリすなや』とかあり得ない。僕はこう見えて礼儀を重んじるタイプだ。江戸やんに対してもかなり酷い事を言った。それだけでも重罪なのに、一体この女、どういう教育を受けてきたんだと思った。歴代の男のせいか? それとも親のせいか? いや、我々ももうそろそろ立派な大人だ。誰かのせいにしてはいけないのだ。
「お前、高1の時に梨花と付き合ってたやろ?」