最後の男
僕等は、終電近くまでバーガーショップで語った。たわいもない会話で大笑いした。時間が経つのも忘れるぐらいに──。
次の日、学校で自然とりーくんが輪の中に入ってきた。江戸やんの時もそうだったが、この感じが凄く好きだ。前の日までは、挨拶どころか単なるクラスメイトでしかなかったのに、今じゃ冗談を言い合っている。僕は、前世とか結構信じるタイプだ。彼女と付き合う前までは、そんな事は考えもしなかったが、『前世、夫婦やったかもな』と言われ、不思議なほど納得したのをきっかけに、そういうのってあるかもしれないと思うようになった。だからこいつらともひょっとしたら、前世からのつながりがあるんじゃないかと真剣に思った。
「江戸やんの真似をした。どうや?」
「似合ってるよ。ヤンキー臭が消えた気がするよ」
「マジか? 今時流行らんからな」
「暴走族のリーダーの言葉とは思えんな」
僕は、江戸やん、レプ、りーくんの会話を聞きながら横でうなづいていた。ずっと聞いていたいぐらい気持ちが落ち着く。
「下のズボンがな、お前らみたいな感じにならんねん」
レプがりーくんのパーカーをめくり上げ、有名ブランドのベルトを指差した。
「りーくん、ベルトは取れ。腰までズラして履くんや」
「凄いベルトだな。高そう」
「ほんなら、お前らベルトしてないんか?」
そういうと、りーくんは僕の灰色のトレーナーをめくり上げた。
「いやん」
「いやんやないねん。おもろいな、近ちゃん」
暴走族のリーダーにあだ名で呼ばれ、なんとも不思議な感覚に包まれた。
「レプ、暴走族のリーダーに近ちゃんと呼ばれたぞ」
「そら呼ぶやろ。りーくんは仲間やねんから」
「近ちゃん、お前リーダーやろ?」
「リーダーはレプ。僕は係長」
「近ちゃん、俺は?」
「江戸やんは、スーパースター」
りーくんが腹を抱えて笑っている。レプも江戸やんも笑っている。何度も言うが、こいつらがいなければ、僕はあの漆黒の闇から一歩も出れずに彷徨っていただろう。それは間違いない。この先、仲間の事を悪く言う奴が現れたら、僕は本当に何をするか分からない。想像つかないのだ。仲間を悪く言われ、平静を装ってヘラヘラしている自分が。