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9月5日──あっという間にその日は来た。いや、来てしまったと言った方がいいのか。絶望的に長かった、1分1秒が永遠に感じていた4月。あの頃の僕が、今の心境の僕を理解出来るだろうか。いや、無理だろう。まるでタイムスリップしたぐらいのスピードで今日を迎えている。そう、あの苦しんだ日々がまるで昨日のように感じるほどに。
僕は彩乃を愛している。気持ちに変化は見られない。だが、白黒付けないと気が済まない性格が真実を知りたがっている。元彼女は、何故あんな事を言ったのか──。
『間を空けよう』
こんな事を言われて、別れを意識しない奴がいるのか。この世にそんなおめでたい奴がいるというのか。何も悪い事をしていない。新しい恋に堕ちただけなのに、かつてないほどの罪悪感に飲み込まれそうになっていた。かと言って、元彼女とやり直すつもりはない。ただ、何故あんな事を言ったのか、理由をどうしても知りたかった。その答えが、仮にリーくんの言ったような事だったとしても何も変わらない。ただ、真実を知りたいのだ。何故苦しんだのか、何故別れなければいけなかったのか。彼女はこうも言っていた。
『まだお互いが好きなら』
好きじゃなくなった場合は、あの場所に来なくてもいいという事だ。それが答えだと思ってくれという意味だろう。今の僕はもう彼女を好きではないから、行く事は出来ない。いや、よく分からなくなってきた。好きじゃなくなったなら、来ては行けないとは言ってなかった。
あの時、あの瞬間の彼女の表情がどうしても思い出せなかった。ショックすぎて、色んな事がぶっ飛んでしまっていたからだろうか。だが、これだけは言える。彼女はあの公園で絶対に待っていると。
彼女に会いたい訳ではない。どうしても知りたい。その為には、あの公園に行かないといけない。行くという事は、彩乃を裏切る事になるし、黙って行くなんてのは論外だ。僕は、彩乃を傷付けずに自分の欲を満たす方法を探っていた。彩乃を全く傷付けない方法は黙っておく事だが、それは駄目だ。一つ思いついてはいるが、彩乃が首を縦に振ってくれるかは分からない。分からないけど、それしか方法はないと思った。