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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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夏の終わりに

 

 夏休み中にバイトを始めた。取っ払いの日雇いバイトだ。リーくんの紹介で、チラシ配りを週4日入っていた。彼女が出来るとデート費用がいる。僕は、基本的に相手にお金を出させたくないタイプだ。理由は、初めて彼女が出来た時、親父に言われたからだ。女性にお金を出させない事と、どんなに喧嘩をしても、ちゃんと家まで送り届ける事──。彼女が出来る度にその言葉を思い出して、守り通してきた。大して難しい事ではないが、そのおかげで喧嘩をしても何処か冷静でいられるようなった。もちろん、ブチ切れた事も沢山ある。だが、その場所から怒りに任せて立ちさった事は一度もない。そこから逃げても何の解決にもならないし、男として無責任だからだ。親父にそこまで説明を受けた訳ではないが、多分そういう事だろうと理解している。



 彩乃とは週に2回は必ず会っていた。彼女もコンビニのバイトをしているから、お互いに調整しながら、夏休みを過ごしていた。8月の中頃に、みんなで集まってカラオケに行った。5人組と、それぞれの彼女、合わせて10人で朝まで騒いだ。ほぼ1日中みんなでいたが、あっという間に時間は過ぎていった。思い返してみれば、我々5人組と女3人組は犬猿の仲だったが、江戸やんと安奈、たてとルカ、そして、僕と彩乃とカップルになった。レプは歳上の香織さん、リーくんは食堂コンパで知り合った歳下の由真ちゃん。香織さんは、カラオケで全員お店にスカウトしたいと言っていた。冗談かと思っていたが、後で彩乃に聞いたら、名刺をもらったと言っていた。



 カラオケ終盤に、トイレでリーくんと会った。この間の事を気にしていたらしく、少し話しをした。リーくんは、由真ちゃんと仲良くやっているが、結婚相手は決まっているらしい。親からは、結婚するまでは自由に恋愛はしていいが、その後は絶対に認められないと釘を刺されていると話してくれた。身内に同じ苗字がいるだけで、僕の前の彼女もそうだとは限らないがと前置きをした上で、ひょっとしたら、僕の本気度を確かたんではないかとリーくんは言っていた。結局、そうだったとしても彩乃と付き合った僕は、結果的に本気ではなかったという事になる。いずれにしても、終わった話しだ。終わったはずなのに、このトイレでの会話以降、僕はまた春先の自分に戻りかけていた。

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