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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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4ページ目

 

「……。ドンピシャやな」


「マジか。俺の勘は当たるんや」



 世の中広いようで狭い──こんな話しになるとは夢にも思わなかった。久々にその名前を聞いて、彼女と上手くいっていた時の甘い香りが頭の中を吹き抜けた。初めて彼女と深い中になった帰り道に、金木犀の香りが漂っていた。僕は、彼女に『この香りすきやねん』と言ったら、『トイレの芳香剤の香りやん』と一蹴された。鮮明にとまではいかないが、あの頃の事が蘇った。



「でも、新しい出会いを求めてるって事で、ほっとした部分もあるわ」


「……」


「自慢する訳じゃないけど、街歩いてても、みんな振り返るほどの女やったな」


「……」


「結構きつい娘やったから、その先輩もこっ酷く振られたかもしらんな」


「……いや、そうじゃなくてな」


「何が?」


「騙して連れて行ったらしいわ。女同士で遊んでるところに、偶然を装って合流みたいな」


「えっ?」


「何か、誘っても速攻で断られてたみたいやわ。好きな人おるからって」



 頭が真っ白になった。好きな人とは、普通に考えれば僕の事になる。スポーツカーの男も身内だと判明した訳だし。でも、今さらそんな事を聞かされてもどうする事も出来ないが、得体の知れたこのざわめきが、忘れかけていた感触とリンクした。



「……。終わった話しやな」


「悪い。掻き乱すつもりは一切ないけど、お前の苦しんでた姿を見てたからな」



 その言葉が凄く染みた。ぶっきらぼうの彼が、自分に対してそんな風に思ってくれていた事、ちゃんと見ていてくれていた事に感動した。やはり、暴走族のリーダーは伊達じゃない。



「それと、俺の身内に同じ苗字の人がおってな」


「うん」


「一概には言えないが、そういう事なんかなって」


「どういう意味?」


「お前に理解させるのが一番難しいわ。レプやら江戸やんとは違うから」


「話しなら理解できるよ」


「いや、そういう事じゃなくて。お前がもっとも嫌う事やから」


「ごめん。やっぱり意味が分からん」


「……。お前、俺が日本人じゃない事をどう思う?」


「どうも思わない。リーくんは親友で、大切な仲間や」


「そういうところがみんなを引き寄せるんや。お前は。俺よりもよっぽどリーダーにふさわしい男や」



 リーくんの言いたい事が今ひとつ分からなかったし、それ以上の事をリーくんも話さなかった。どこか煮え切らない気持ちのまま、お寿司と焼肉をご馳走になり、僕はリーくんの家を出た。



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