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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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9ページ目

 

 僕は、人通りの多いこの駐輪場脇で彩乃を抱きしめた。今まで、自分よりも身長が高い女子とは付き合った事がない。当然、抱きしめた事もない。彩乃も直ぐに僕の腰に手を回してくれたが、行き交う人々には、僕が抱きしめられているように見えているんだろう──。



「近本君、前の彼女とやり直しても一緒にいてな」



 彩乃の本心ではない事は分かっている。いや、世の女性の大半がそうだろう。僕は、最初が肝心だと思った。ここで取り繕うと、そこからつぎはぎだらけになってしまい、結局すぐに破けてしまうはずだから。



「ちょっと歩かない? もうさっきから我々注目の的になっておるし」


「ほんま。全然気にならなかったけど、流石にただの道端やもんね」


「彩乃って、あれやな。見た目より華奢やな。抱きしめたら、折れそうやった」


「ほんまに? ちょっと太ったかなと気にしててん」


「全然。とりあえず、歩きながら話すわ」



 僕はポケットに忍ばせていた、マリン系のコロンを首筋にかけた。



「あっ! 近本君の香りや。それ、探して買ってんで」


「マジで? 何で?」



 彩乃は、少し照れたような素振りで同じコロンをトートバックから取り出して見せてくれた。



「何か近くに感じられるし、家でも近本君を感じられるからさ」



 可愛いすぎて死ぬ案件である。だが、毅然とした態度で、彼女の心に刺さった棘を抜く作業を迅速に行わないといけない。イチャイチャするのはそれが終わってからだ。



「担当直入にいうが、やり直す事はない」


「何で?」


「何でって、彩乃がいいから」


「……。ありがとう。ほんま?」



 僕は、昨日の居酒屋での出来事を話した。



「……。じゃあ、向こうはまだ近本君を好きって事やんな」


「それは分からないけど、話しを聞いても全く動じなかったからさ。」


「ほんまに?」


「やり直す事ないよ」


「よかった! ほんまに良かった」


「二股でも良かったんやろ?」


「最悪それでも良かった。でも、今は駄目」



 自転車を押しながら適当に進んでいた。ちょっと路地に入ると人気がほとんどなかった。僕は、このチャンスを逃すまいと自転車を止めて、彩乃に軽くキスをした。

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