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背後から待ち望んだ声が聞こえた。駐輪場の方から来ると賭けていた事は訂正しようと思う。背後から来たら、末長く一緒にいられるに訂正だ。
「おっおっす。ご機嫌いかが?」
「近本君、今晩は。やっぱり何か面白い」
真っ白のタイトなTシャツに、スキニータイプのデニムが彩乃の長い足を強調していた。とても美しい。直視出来ないぐらいだ。
「ごめんね。こんな暑い所で待たせて」
「汗だく。でも、彩乃は汗かいてないね」
「いや、めっちゃ汗だくよ。背中とかすごい汗」
僕は、レジ袋からスポーツドリンクを取り出して彩乃に渡した。
「あんまり冷えてないけど」
「私に? ありがとう。私も買ってきたんだ」
彩乃は前籠に乗っていた白いトートバックから同じスポーツドリンクを取り出して、僕にくれた。
「奇遇やな。一緒のやつやん」
「あれ? 近本君、好きって言ってなかった?」
「いや、彩乃じゃなかったか? だから買ったんだけど」
「そうなん? 私も同じ理由」
僕は歯に噛んだ笑顔の彼女を見つめた。胸が苦しくて、溢れでそうな感情を無理矢理押し返した。『愛してる』という台詞がもうそこまで出そうになったが、流石にコンビニの前で言う事ではない。
「ここにいても仕方ないし、場所変えよっか」
「うん。踏み切りの向こうに公園があるけど、そこまで持つかな」
「そこまで持つかな?」
「うん。ちょっとね」
「アイスでも買った?」
「近本君、ちょっと止まってくれる?」
「えっ? うっうん」
僕は、コンビニの駐輪場に自転車を止めた。
「実はね、近本君に伝えたい事があってさ」
「ちょっちょっと待って! こっちの話しから聞いて欲しい」
踏み切りの向こうにある公園で告白しようと思っていた。遊んだ事はないけど、何故か気になる公園だ。ブランコとベンチしかないけど、ベンチに座って『愛してる』と言おうと思っていた。だが、彩乃の表情を見ると、今すぐにでも何かを言いたそうな感じだった。
「嫌や。私の話しを先聞いて。近本君の話しはその後で聞かせてもらうから」
「いや、マジで先に言わせて欲しい。お願い」
彩乃は首を横に振りながら、僕の目の前に立った。