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平成初期型!!  作者: 稲田心楽
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7ページ目

 

 昔から何でも出来る男だった。勉強は僕と同じで苦手だったが、走らせたら学年でもトップクラス、水泳の時間などはまるで飛魚のごとく泳ぎまわる男で、何より手先がとても器用だった。



「将来は自分の店を持ちたいと思っててな」


「そうなんや。凄いな。リーチの店か」


「ずっと先になりそうやけどな。それよりもさ、ちっかんには言っておいた方がよいと思って」



 さっきまで流れていた有線は切られており、店内は鎮まりかえっていた。同じ空間のはずなのに、違う場所のような感覚を覚えた。



「めっちゃ気になる。何なん?」


「お前の前の彼女がこの間来たわ」



 少しびっくりしたが、彼女関連の事ではないかと心のどこかで感じていた。



「……そうなんや」


「男2人、女2人やったな」


「……そっそうか」


「お前の事を聞かれてな。どうしてるんみたいな感じで」



 どうしてるもこうしてるもない──君のおかげで成長させてもらったと言いたかったが、まだまだそこまで人間が出来ていなかった。



「元気でやってるんとか聞いてきたが、最後にストレートに聞いてきたわ」


「何て?」


「彼女とかおるんかって」


「はっ? 意味わからんわ」



 怒りがこみ上げてきた。自分は新しい彼氏が出来たから、僕にも新しい彼女が出来ていて欲しかったのか──。頭に血がのぼってクラクラしてきた。



「だから聞いたんや。そっちこそ大学生らしき奴と付き合ってるんやろと」


「その一緒に来てた男かな」


「かなり強く否定してたよ。彼氏はいてないと」


「えっ?」



 新学期の初日、見上げた桜の木を思い出した。鮮やかなピンク色のはずがモノクロに見えたあの日。絶望の真っ只中だったあの季節を──。



「スポーツカーの男の話しもしたよ」


「……何て?」


「従兄弟の兄ちゃんらしいわ」


「……悪い。ちょっと分からん」



 リーチの話しによると、従兄弟は彼女の両親に言われて送り迎えをしているらしい。悪い虫が付かないようにだそうだ。




「従兄弟の兄ちゃんに監視されてるって事?」


「平たく言えばそういう事になるな」






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