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「はぁ……」
「近ちゃん、溜息が深すぎるやろ」
「何か悩みでもあんの?」
「話せば長くなるよ……」
「どのくらい?」
「最低でも放課後まで」
「長っ! まだ2限目じゃなかったっけ?」
高校1年の時、レプと初めて話した事を思い出した。無理のない感覚というか、どこか染み込んでいくようなそんな感じだった。この梅野君にも同じような感覚を覚えた。直感だが、彼とは親友になるかもしれないとこの時思った。
「まぁ、簡単に言うと、彼女に振られたんや」
「レプ、やっぱ振られたんか? この僕は」
「この僕はって言われても。丁度ええやん、梅野君に聞いてもらったら? 超絶男前な彼に」
梅野君は僕をじっと見つめていた。とんでもなく男前である。男から見ても、彼氏にしたい男No.1だ。女の事で悩んだ事など一切なさそうな彼に、僕のウジウジ話しを聞いてもらうのは少し気が引けたが、常に誰かに聞いてもらいたい病にかかっていた僕は、彼に全てをぶちまけた。
「……辛そうだね。わかるよ、その気持ち」
「梅野君は女で悩まんでしょ」
「それがさ……」
意外な事に、梅野君も東京の彼女について悩んでいたらしい。所謂、遠距離恋愛というやつだ。最初の1カ月は、毎日何回も電話があったり、手紙も届いていたみたいだが、段々その頻度が低くなっていったらしい。連絡しても素っ気ない態度で、最近では梅野君から連絡しないと相手から何のリアクションもないそうだ。普通に考えたら、かなりヤバイ状況である。新しい男が出来た確率がかなり高い。そんな事は梅野君もわかっているだろうが、心のどこかで信じている自分もいるんだろう。
「何かさ、似てるよね。梅野君」
「そうだな。毎日が重くてさ。しかも長い」
「ほんとそれな」
「ていうかさ、お前ら鏡見てこいよ」
ずっと黙って聞いていたレプが口を開いた。
「お前らほどの男前が女の事で悩まされてんなよ。悩ます側やろが」
少し苛立っているように見えた。レプは年上女子を虜にする恋愛マスターだ。恋愛観等を深く語った事はないが、逆の立場だったら、レプに同じ事を言うかもしれないと思った。