お風呂さいこーと彼は思った('Д')
おはようございます!
今日の夜も投稿予定ですので何卒よろしくお願いします!
「あー、生き返るー」
心地良い湯船に浸かり、全身からゆっくりと力を抜いた。
自宅の風呂場である。
タイマーでセットした追い焚き機能が性能を発揮し、帰宅直後の入浴が可能になっていた。タイマーをセットしたのはマホちゃん。何故おれんちのタイマーをマホちゃんが使いこなしてるのかはいまいち納得がいかなかったが、まぁ、この快感の前には細かいことはどうでもよくなった。
マホちゃんぐっじょぶ。
「おい、醤油どこだ?」
曇りガラスの向こうに人影あり。
声のトーンから人物を特定。
馬鹿がおれの入浴をじゃましに来やがった。
「しらねーよ。おれが台所の配置を覚えてると思うか」
「自分ちだろ。てか、おばさんもおじさんもいないのかよ」
「急な海外出張。そのまま連絡がない」
「相変わらずだな、あの人たち」
呆れたようなつぶやき。
実際おれも呆れている。まさか帰宅途中のスマホへのメールで海外出張を告げるとは思っていなかった。
そのおかげでルシエルたちを自宅に連れ込むことができたんだが。
「てことは、マホちゃんと二人で住んでるのか?」
「住んでるって…まぁ、最近はそんな感じか? あと大和田さんもしばらく泊まっていくって言ってたな」
「…マジかよ。てか、あの人。大和田さんって何者なんだ?」
「よくわかんねえけど、マホちゃんの知り合い。あと、小白川ダンジョンの神社あるじゃん。あそこん家の人だって言ってたな」
「……お前、本当にもってるな」
「もってる?」
「なんでもない」
それきり言葉が返ってこない。
おれとしては一人で湯船を堪能したいんだが、何故か曇りガラスの向こう側には人影が見えたまま。
特に用事もないならとっと台所に戻ってほしいんだけど。
そんなおれの思いが通じたのか、
「あ、あのさ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
あいつはそう切り出してきた。
やっぱり、用事があったらしい。
一度顔をお湯で洗ってから、返事をした。
「なんだよ?」
「いや、大したことじゃないんだ。ほら、あれだよ。昔はさ、おれたちでよく泊まりに来たじゃんか? カホとかミキとかとも一緒に?」
「ああ。昔ってほど前じゃないだろ?」
たしか小六まではお互いの家を行き来していたはずである。…まぁ、中学になってからはお互い気恥ずかしくなってやめたが。
クラスの連中にもからかわれたような記憶もある。
確かに男女四人で泊まりっこをするなんて普通は考えられねえからな。
親同士の仲が良いからだったんだろう。
その頃からマホちゃんとも付き合いがあったんだった。それが担任になるとは思ってもいなかったが。
「今、オレら冒険者になったじゃん? これからダンジョンとか潜って行かなきゃだし?」
「? ああ、それが?」
「それでさ、ダンジョン近くに拠点があった方が都合がいいっていうか、なんつーか。…いや、都合がいいってだけじゃなくて! やっぱり、安心できる方がいいっつーか」
???
何が言いたいのかわからない。
こいつにしては珍しく歯切れが悪い。どうも焦ってるみたいだが、なにを焦っているのかよくわからない。
曇りガラス越しに見える人影もなにやらうねうね動いているので、見えていないのにジェスチャーすら加えているらしい。
なにがしたいんだ、こいつ。
「だから、オレたちも」
「いつまで風呂に入ってるっ!」
マホちゃんの怒号。
やべえ。なんかしらんが説教モードが入ってる。
おれは思わず「ごめんなさいっ!」と叫んでいた。
「…マホ姉ちゃん」
「お前もだぞ。カレーはできた、さっさと戻れ」
「…醤油は?」
「とっくに見つけたぞ。もたもたしていてはチャンスを逃すからな」
「なっ!」
…なんかしらんが向こうでも一触即発の雰囲気。
立ち上がった体勢からゆっくりと湯船に戻る。
ほら、あいつらが出て行かなきゃ着替えもできないし。
おれはもう少しだけリラックスモードを続けることにした。
読んでいただきありがとうございました!




