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相棒って大事と彼は思った('Д')

何とか今日も投稿できました。

明日も更新するのでよろしくお願いします!



「なんでじゃあああああああっ! お主ら、わしのこと馬鹿にしすぎじゃろぉおおおおっ!」


 響いた絶叫は怒声というよりも泣き声に近いものがあった。


 実際、顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。


 胸ぐらを掴まれ、至近距離でそんなことを言われるとは思ってもみなかった。


 振り出しに戻る。


 おれたちはクソガキに会いに最初の祠に戻ってきた。上機嫌でおれ達を迎えたクソガキだったが、おれたちの様子を間近で見てからはこの通りである。


 癇癪を起こした幼児並にひどい。いや、実際見た目は幼児なんだが。


「いや、悪かったって。おれがへばっちまって、マホちゃんがやってくれたんだ」


「じゃからお前がやれっていったじゃろぉ! そいつじゃだめなんじゃてぇえええっ!」


「うおおおおおおおっ? おおおおちつけけってっ?」


 この小さな体のどこにそんな力があるのか、クソガキはおれを前後に揺さぶってくる。抵抗も無意味でなすがまま。ていうか、あれ? なんかマジで力が入らないような…?


「あああああああ、どうすんじゃどうすんじゃどうすんじゃっ! 千載一遇のチャンスじゃったのに! なんてことしてくれたんじゃ貴様ぁっ!」


「申し訳ありません。ぶっ殺しちゃいました。てへっ♪」


「ふっざけんなぁあああああああっ!」


 ぶんぶんぶんと耳元で風を切る音が聞こえる。


 振り回される衝撃と遠心力のせいで頭が真っ白にぃいいい。


「なにがぶっ殺しちゃいましたじゃ! お前ら、本当にいいかげんにせえよ! しかもなんかよくわかんない小鬼までつれて来おって!」


「あ、オレ?」


「神の御前じゃぞ! 名を名乗れぇい!」


 クソガキの意識がおれから奴へと移った。


 おかげでようやく解放されたおれは、そのまま尻餅をついた。…今更ながら気づいた。金縛りって奴だ。あんなクソガキに抵抗できなかった理由を悟って、せめて奴には無駄に抵抗するなと言ってやろうと思った。


 が、そこでまた重大なことに気づいた。


 おれ、こいつの名前知らねえ。


「…鬼、丸だ」


 ぽつり、と奴は言う。


 独り言みたいな声の大きさだったが、奴は確かにそう言った。


「ただの鬼丸だ、よろしく頼む」


                ※


「よし、鬼丸か。そこに直れ、このうつけがっ!」


「がは…っ?」


「ほう、貴様信心が足らんな? 真名を名乗った度胸は買うが、その紙みたいに薄い抵抗力はなんじゃ? わしのダンジョンから生まれたくせにわしのことも知らんみたいだし、これは教育が必要なようじゃのう? ん?」


 全身を硬直させて直立不動になる鬼丸。


 何かしゃべろうとしているようだが、金縛りにあっては指一本動かすこともできない。さっきまでやられてたからわかる。 


 にしし、と薄気味悪い笑みを浮かべるクソガキ。


 助け船を出そうにも、まだ全身がしびれていてうまく声を出すこともできない。


 ゆっくりとクソガキの手が鬼丸の胸板に触れようとして、


「…そこまでにしたらいかがですか?」


 大和田さんが声を発した。


 これまで同様に額は床に着けている。


 それでも凛とした声音ははっきりと聞こえた。


「誰がしゃべっていいと言った?」


 うお。


 クソガキは急に高圧的な声を発した。


 おれに対してのそれとは明らかに違う態度。その迫力に一瞬ビビってしまった。


「恐れながら申し上げます。その者は八郎様の修行の一巻として行った巣に生息していた個体です。襲撃の際に我らの前に立ちはだかり、その膂力と胆力によって八郎様自身が見いだした者。その者に罪はなく、罰せる道理もありません」


「わしは中層に行けと言うたはずじゃ。こんな上層に巣くっているだけの小鬼に用はない。そもそも、何故小鬼の巣など襲ったっ?」


「八郎様が経験不足故に」


「それで良かったんじゃっ! 決して勝てぬ存在! それを御すからこそ試練というんじゃ馬鹿者っ!」


「無茶、言ってん、じゃねえよ」


 ようやくしびれがとれてきた。


 尻餅をついたままだった姿勢から立ち上がる。…やばい、膝が笑ってる。


「よいか、ハチ。これはお主の為に言っておるのじゃ。試練とは正しく真っ当に超えなければ意味がない。その先にこそ得難いものを手に入れることができるのじゃ」


 クソガキが、頭茹だったこと言ってんじゃねーぞ、こら。


 そう言いたかったが、そんな無駄なことを言う気力がなくて黙り込む。


 ようやく足下がしっくりきた。


「今回の神託はあくまで第一歩じゃが、一歩目だからこそ大事じゃったんじゃ。お主と共にこれから苦楽を共にする相棒! それを得るための試練! だというのに、こんな…!」


「だったら…っ!」


 思わず叫んだ。


 自分で思ったより遙かに大きな声がでた。


 クソガキの言いようがあまりに気に食わなかったせいだ。


 勝手に見下しやがって。


 そんなおれの気持ちにも気づかずにクソガキは怪訝そうにおれを見ている。


 それもまた気に食わなかった。


 つーか、相棒だと?


 そういうのはもっと早く言えよ。


 いや、そもそも、なんでおれの相棒をてめえが決めるんだ?


 だから、


「だったら、なにも問題ねえ」


「そいつが、鬼丸がおれの相棒だ…!」

 

 おれはそう叫んだ。

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