活路Ⅱ
ブックマーク1件ありがとうございます!
明日からも投稿していくので何卒よろしくお願いします!
『あるけど、今は使えないわよ(*^-^*)』
まさかの斜め上の回答。
質問してからもっとましなことを言えば良かったと思ったが、まさかそうくるとは思えなかった。
「ば、おま、なんで教えねえんだよ!」
『教えたでしょ、今(*^-^*)』
こいつ…!
やっぱりこいつもグルか?
怒りで頭の中がどうにかなってしまいそうだったが、目の前から迫る赤い槍がそれも許してくれなかった。
「私を、無視、しないで、くださいっ!」
さっきよりもずっと早い。
一度に繰り出された突きは六回。
けれど、その分明らかに精度がかけた。ぶっちゃけ、ビビって動かなかったがかすりもしない。こいつ、本当にセンスがなさすぎる。
ここまでくると本人にもわかってきたのか、なんだか半泣きになっていた。
「…うぅー」
『あーあ、泣かせちゃった('Д')』
「こっちは殺されかけてんだよ!」
とにかく距離をとる必要がある。
前転の要領で体制を崩した少女の脇をすり抜ける。
視線だけが悔しそうにおれを追ったが、さすがにそれは無理がある。人間…かどうかしらないが少なくとも人体の動きには限度ってもんがあるのだ。
そのまま反対の壁際に背中を預ける。
少女は恨めしそうにこっちを見ている。
「お兄さん、強いですね」
お馬鹿ちゃんが弱いだけだよ、とは言わなかった。言えなかったのだ。
さすがに息が上がってきた。少しでも呼吸を整えたかったし、疲労具合を悟らせたくなかったのだ。
おれは少女から目を離さないようにして、ルシエルへ再度問いかけた。
「武器が使えないってどういうことだよ! ある場所くらい教えてくれ!」
「え、お兄さん武器持ってないんですか?」
まさかの反応2。
少女はショックを受けたみたいな顔をしておれを見つめてくる。これだけ逃げ回っていて一度も反撃しないんだから気づいてないはずないだろ、と思ったが、案外その通りなんじゃないかと納得してしまう。
やっぱり、この娘馬鹿だ。
「…ああ、持ってない」
「準備不足ですね。ダンジョンに手ぶらでくる人っているんですか」
なぜか感心された。
…いや、まぁ、そうでもしなきゃここに来ることもできなかったって言うかなんと言うか。
「でも、残念ですね。ここに武器はありません。お兄さんは自分の準備不足を呪って死んでください」
気のせいか随分と毒舌になってきた。
いや、ここまでコケにされて頭にこない方がおかしいか。さっきよりもはるかにやる気を漲らせ、じりじりと距離を詰めてくる。
いや、ほんとこの娘はわかりやすい。
そんなに力んでも当たらないもんは当たらないのだ。その真っ直ぐさはすばらしいが。
それに引き替え、
『ん、なによ。なんでそんな目で見てんのよ?』
こいつはクソの役にも立たない上にうそつきときた。
「うるせえ、うそつき! 武器ねえじゃねえか!」
『ちょ、うそつきってなによ! あるわよ! あるけど使えないの!』
「じゃ、どこにあんだよ!」
『だから、目の前にあるでしょ!』
「はぁ?」
思わず視線を巡らせる。
そんなもんはどこにもない。
あるのは無駄に頑丈そうな台座と透明なガラス、そしてその中にいるまるで役に立たないうそつき女。
武器なんて、どこにもない。
『だから』
『あたしが武器なの!』
なにいってんだ、こいつ。