いくぞと彼は思った('Д')
更新大分遅れて申し訳ありませんでした!
今日からまた投稿していくのでよろしくお願いします!
「は? 嫌だよ」
「だろうな」
何が楽しいのか。奴は浮かべた笑みをさらに深め、心底楽しそうに笑っている。その表情があまりに不気味過ぎて、一歩距離をとる。
その動きに合わせることもせず、やつはただおれを見ている。
「…マジで意味がわかんねえな。部下になれってのはどういう意味だ?」
「ん? 言葉が間違っていたか? 確かこういう言い方だったと思ったが。なんだ、おれが勝ったら仲間になれってことだ。お前が勝ったら仲間になってやるからよ」
げんなりとした気分になる。
冗談というにはあまりにつまらないし、そんなことを今言われて頷く奴がいると思っているのか。
おれたちは殺し合いをしているのだ。
「嫌だね。あんなちっこい連中に混ざりたくねえよ」
「それなら安心しろ。連中はいない」
「あん?」
奴はゆっくりと遠くを指した。
巣だ。
ここからだと隆起した無数の岩石のせいでよく見えない。それを察したのか、奴は一言付け足した。
「もう誰もいないさ」
「…逃げたってのかよ。あんたを置いて」
「ああ。所詮、お飾りだからな」
意味が分かんねえ。
嘘なのか本当なのかわからず困惑していると、ルシエルが『嘘じゃないみたい』と言った。
『すごいね。なんていうか一目散って感じ。ほら、見なさいよ』
途端、見えないはずの光景が見えた。隆起した岩石の向こう側、黒い巣穴から我先に逃げ出す小鬼の群れが見える。
面白いのはそれぞれが自分の荷物を抱えていることだった。こういうところは人間と変わらないらしい。奇妙なことは抱えた荷物がおれですら見覚えのある家電や高価そうな装飾品だったことだ。もちろん、武器も。
「マジみたいだな」
「嘘はつかねえさ。だが良いのか?」
「なにが?」
「あいつらを逃がしてしちまってさ。放っておけば、ほかの人間を襲うぞ?」
小鬼の習性は一般常識として知られるほど有名だ。
その理由は二つある。あいつらダンジョンの比較的上層に生息する点と他のダンジョンをを含めて
どこにでも生息している点だ。
身近にいるせいで嫌でもその存在について知ることになる。
残虐であり卑劣。
あいつらがダンジョンで行った、あるいはダンジョン近くにある町や村で行った過去の事件で嫌と言うほど証明されている。
だからこそ、マホちゃんもこいつらを標的にしたんだろう。少しでも早く駆除するために。
けれど、
「あんな連中どうでもいい」
思いがけず出た言葉はそんな一言だった。
自分でも驚いた。
「ほう?」
目の前のあいつも驚いた顔をしている。
やべえ。モンスターの表情とかよくわかんねえはずなのにわかる気がしてきた。
「あんたの方が遙かにやべえからな。ここで潰す」
「そうかい。そういうノリも大好きだぜ、オレは」
重圧が増していく。
やつの姿が二倍三倍にも見えてくる。
一歩でも動けば戦闘開始。しくじればその瞬間に死ぬ予感があった。
全身に鳥肌が立ち、眉間の辺りが妙にひりついた。
互いが互いの挙動を凝視する事数秒。
そこで、ようやく始まった。
当然、先手はおれ。全力で相手の懐に飛び込んだ。




