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マジでイミフと彼は思った('Д')

ブックマークありがとうございます!

プライベートで時間が取れず、投稿が遅くなりました。

明日以降は時間がとれるのでまた定期的に投稿したいと思います。

 単純な体格さは時に勝負を決する十分な理由になる。


 目の前にいるそいつは背丈こそおれと同じだが、その厚みには明らかな違いがあった。


 なによりも生物としての差。


 骨格と筋量の差が今の状況が当然であることを証明している。


「がはっ…!」


 腹が破裂したかと思った。


 振り抜かれた拳が掠っただけでこれである。まともに受ければ内蔵まで吐き出すかもしれない。


 衝撃で止まった足を無理矢理動かし、繰り出された拳を掻い潜る。


 ここで体格差のなさが辛くなる。


 拳の当たりどころがマッチするのだ。


 こっちが適当に降ってもある程度いい場所で当たるが、それは相手も同様だ。


 まして、おれの百発が相手にとっては一発。


 それだけの基礎能力の差が、今の状況を生みだしている。 


「くそが!」


『バカ! 単調すぎ、もっと工夫しなさい!』


 しかも最悪なのはこんな時に頭の中で声が響くことだ。黙ってろと言えば言うほどやかましくなるのでもはや放置するしかなかった。


 ほら見ろ、効いた。


 蹴りなんてのは素直に出しゃ当たるんだ。


 そんな風に思っているおれが甘かった。


「ウォオオオオオッ!」

 

 喉元につま先をぶち込んでやったはずなのに、奴は雄叫びを上げながらつっこんでくる。


 前蹴りのせいで崩れた体勢だったおれは、そのまま押し倒された。


 やばい、と思うより先に拳が顔面に降ってきた。


 マウントポジション。


 衝撃に一瞬思考が止まった。


 痛みは、ない。


『だから言ったじゃない! ああいうのはもっと相手を崩してからだってば!』


 うるせえ!  


 叫ぼうとして顔面を何かが覆っていることに気づいた。というか頭全部が覆われている。


 そこまで考えてルシエルが救ってくれたことに気づいた。


 が、さらに降ってくる拳に思考が寸断される。


 衝撃、衝撃、衝撃、衝撃。

 

 何度も何度も頭を揺らされ、思考がどんどん鈍くなっていく。

 

 慣れるなんて事があるはずもない。


 奴が拳を振り下ろす間隔がどんどん短くなっていくごとに、ある感情がどんどん膨れ上がっていることに気づいた。

 

 当然、怒りだ。


「ぶっ殺す…っ!」

 

 無意識に上半身にかざしていた両腕を開く。


 ぼやけた視界に前のめりになったヤツが見えた。右腕を掲げ、全力で叩きつけようとしている。


 馬鹿か、こいつ。


 おれは両手の親指に装甲を集め、その指をヤツの眼球に向けて突き出した。


「ぎやああああっ!」

 

 外れた。


 親指が両目からずれて眼底の部分が突き刺さっている。


 奴は激痛に顔を歪め、全身を硬直させている。


 ここまでは狙い通り。


 そのまま腕力で奴の頭部を引き寄せ、腹筋を使って上体を持ち上げた。


 衝撃。


 この体勢からの頭突きは想定していなかったのか、奴はそのまま体勢を崩した。


 マウントポジションを抜け出し、そのまま立ち上がった。


「死ねっ!」

  

 叫ぶと同時に奴の頭部を蹴った。


 加減なんてしていない。頭部と腕に装甲を集めたせいで、脚を覆っていた分は薄かったが、その分思い切り振ることができた。


 感触は十分。


 なのに、奴は鼻血すら出さなかった。


 くそったれが。


 振り抜いた勢いで、おれは距離をとった。


「やるじゃないか」 


 ゆっくりと奴は立ち上がった。


 息一つ乱さない姿に腸が煮えくり返りそうになった。


 こっちは一つ間違えば死ぬ。


 なのにあっちは余裕の表情。


 これほど腹が立つことはない。絶対に、おれがこいつをぶっ殺してやる。


 疲労感はあったが、全身が熱くて仕方がない。


 自分でもわかるほど気力が充実している。


 おれはその勢いのまま、蹴りをたたき込もうと踏み出し、


「待て。一つ提案がある」


 そんな一言に脚を滑らせそうになった。

 

「なんだよ、今更!」


「すまんな。気分が乗ってきたのはいいが、どうにも目的を忘れそうでな」


 にやりと笑みを浮かべてあいつは言う。


 ふざけた態度に無視して拳をぶち込もうかと思ったが、なぜかできなかった。


 あれだ、隙がないっていうやつか。


 ボールを取られそうな時と同じ感覚。今のままぶん殴りにいってもやられるのはおれだと何かが訴えている。


「目的だ?」


「そうだ。私は長だ。我が種族のために戦っている。だが、貴様は喧嘩を売ったと言った。そして、私が買ったとも」


「だから?」


「貴様が喧嘩を売った理由を聞きたい」


 白ける質問だった。


 そんなことを今聞く理由もわからなかったし、聞く意味すらわからない。


 だから、思ったことをそのまま言った。


「おまえがモンスターでおれが冒険者だからだ」


「それだけか?」


「それだけだ。…ああ、でも」


 不意に言葉が続いた。


 自分でも意識していなかったが、それが漏れたことで納得のいく言葉を思いついた。


「今はあんたらに勝ちたくなった。理由はそれだけだ」


「勝ちたいから、か。なるほど、わかりやすい」


 奴はなぜか笑みを浮かべた。


 何がおもしろいのかわからない。


 しかも提案があると言っているくせになにも提案していない状況がなんだか胡散臭くなってきた。


 あれか、時間稼ぎかと思ったところで、


「もし私が勝ったら私の部下になれ。君が勝ったら、私が部下になろう」


 そんな意味不明なことを提案された。

 


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