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これが大人の女性かと彼は思った('Д')

読んでいただきありがとうございます!

最近PVも増えてきてテンションも上がっております!

遅筆ですが、今後ともお付き合い願います!

 はじめてのダンジョン。


 その響きに胸を高鳴らせて意気揚々と挑んだはいいが、その実、実際にすることと言えばひたすら地道な作業と実地学習だけだった。


 地図の確認から始まって、ダンジョン内での方角の確認方法、食事の調達法(ダンジョン内のモンスターは食える…らしい!)、水場の探し方、代表的なモンスターと対処法等々。


 自分で調べていた部分もいくつかあったが、それが浅い知識だったと思い知らされた。


「いいか? 冒険者には生き抜く力が求められる。確かにモンスターの討伐に力を割くのも大事だ。希少な素材が手に入る。だが、ここには素材以外にも鉱石などの資源、果ては出自不明の財宝が眠っている。その両方を天秤にかけることが出来てはじめて一人前の冒険者となる。そして、生き抜くことができて一流の冒険者となるんだ」


 淡々と語るマホちゃんは普段とはまた違った頼もしさがあった。


 意外だったのは大和田さんだ。巫女服なんて移動しにくい格好なのに平然とおれたちについてきた。


 おれはルシエルとスカーレットを身に纏っているから強化されているし、マホちゃんはそもそものスペックが違う。


 その状況下で涼しげな表情を浮かべる彼女は一体何者なのか。


「はい、お水です」


「あ、ありがとうございます」


 大和田さんが水筒をくれた。


 時代劇とかでみる竹とかで出来たやつかと思ったが普通の魔法瓶だった。


 中身を注ぎ、ゆっくりと口に含む。


 うまい。


 冷たい水にレモン独特の酸っぱさが加わって、全身に染み渡るみたいだった。


「疲れませんか?」


「まだ全然大丈夫です」


「そうですか。ハチ君は体力があるんですね。部活はしていたんですか?」


「サッカー部です。そんな強くなかったですけど」


「なるほど、だから体力があるんですね。上半身に筋肉が少ないのもそれが理由ですか。…太股はいい感じなのに」


「え?」


「いえ、お気になさらずに」


 当たり障りのない言葉のやりとりで時間をつぶす。


 自然と脚が止まったのでゆっくりと呼吸を整えた。汗はそれほどかいていない。けれど、朝から歩きっぱなしで少し疲労がたまった気がする。


 部活の時とは違い緊張していたこともあって、消耗は激しい気がした。


「少し周囲の状況を確認してくる。頼んだぞ、エミ」


「はい、承りました」


 マホちゃんはそういうと姿を消した。


 …いや、文字通り一瞬で消えた。


 ぽかんとしていたら大和田さんが遠くを指さしたので、そっちを見て初めて何が起きたのか理解した。


 跳んでったのだ。


「…ほんと、出鱈目だよな」


 ステータスを見て地力の差は理解していた。


 けれど、目の前で人間が消えるなんて錯覚を感じるほどだとは思わなかった。


 大体、マホちゃんはガンナーだ。おれは前衛なのにその動きすら感じられない時点で格のが違いすぎる。


「そう落ち込むほどではありませんよ。貴方はむしろ筋がいい」


「ついてくのに必死ですけどね」


「それで十分。はじめてで活躍するなんて普通はできませんし、あまり良いこととは言えません」


「そうですか? はじめっからバリバリやれた方がいいじゃないですか」


「そういう人ほどダンジョンでは死にますから」


 さらりと言われてどきりとした。


 冗談の類じゃない。ごく当たり前のことのようにいうので、反論する隙もなかった。


「実際にそういう人を見てきたってことですか?」


「ええ、何人も。私の仲間にもいました」


「…その人は特別なスキルを持ってたんですか?」


「そうです。あの子は誰にも負けないと思ってたみたいですが、中層のモンスターに襲われてあっさりと。そういうの、本当に多いんですよね」


 なんだか言葉を続けることができなくて、誤魔化すように魔法瓶を返した。


 大和田さんは魔法瓶を揺らして中身を確認すると懐へとしまった。


 と、同時に何かを取り出した。


「お腹も空いたでしょう? どうぞ」


「あ、ありがとうございます!」


 ラップで包まれたおにぎり。


 しかも、意外とでかい。


 正直腹も減っていたのでありがたく受け取った。


 ほおばると海苔が湿気っていたが、その分味がしみこんでいた。具は鮭。ちょうどいい塩っ気が食欲をそそってあっという間に平らげてしまった。


「ごちそうさまです! うまかったす!」


「ハチ君は本当に素直ね」


 くすくすと笑われた。


 え、なんだこの反応。


 本当におかしそうに笑う大和田さんに若干困惑したが、まぁ笑ってる方がいいかと思い直す。


 辛気くさい雰囲気よりも遙かにマシだ。


「その素直さは武器よ。さっき源さんの話を聞いていたときもそう。素直に聞けばどんなことでもすぐに身につけることが出来るから」


 優しい声音でそんなことを言われた。


 照れるようなむず痒い感覚。


 どう反応しようか迷っていると、


「だから、そう肩に力を入れないで。貴方は貴方の出来ることしてね」


 ああ。

 この人はこういうことを自然に言える人なのか。


 包容力とでも言えばいいのか。


 とにもかくにも、素直にこの人の言うことは聞こうとおれは思った。

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