初体験って大事だよねと彼は思った('Д')
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「すげえ、これがダンジョンか…!」
薄暗い空間に仄かな燐光ぽつりぽつりと見える。
ごつごつとした岩肌の合間を縫うように道が整備され、それ以外は何もないように見える。
奇妙な静けさと冷たい空気のせいで背筋に寒気が走った。
そのくせ心臓の鼓動だけは痛いほど感じている。
ああ、なんだ。
おれは、今、ワクワクしてるのか。
柄にもなく興奮している自分がおかしくなった。
「こらこら、ハチ。それ以上動くなよ」
がっしりと肩を掴まれる。
万力につぶされたような激痛が走り、悲鳴を上げることも出来ない。身体が硬直して、全身から冷や汗が吹き出した。
「マ、マホちゃ…洒落なってない…っ! マジで痛いって…っ!」
「ほら、よく見て見ろ」
肩の力を一切緩めることなく、マホちゃんは空間の一角を指さした。
あまりの痛みで涙目になりながら、その一点を見つめて驚いた。
あれどう見ても、
「わかりやすいだろ? ちなみに後一歩進めば床のスイッチに連動して心臓を射抜かれていた。ワクワクするのはわかるが、ここがダンジョンだと言うことも忘れるな」
銃だった。
それも映画なんかで見たことのあるスナイパーライフルとかいうやつ。おれは詳しくないので型式だとかはわからなかったが、間違いなくそうだ。
しかも、それを構えた人間の姿も見える。
「なんで、人が…?」
「あれは人形です」
さらりと後方で控えていた大和田さんが言う。
手には長刀を握っている。中途半端に広い空間だから、邪魔にならないかもしれないが後方に控える人間が持つ武器なんだろうか。
おれなんて素手みたいなもんなのに。
「このダンジョンでは人型のモンスターの他にも人形がよく出ます。人によく似ているので気をつけてください。ただ、自分の意志はなく決められた動作しかしないのでそれほど危険ではありませんが」
「…いや、それ最初に言ってくれよ」
「言う前に行ってしまったので」
しれっと言われてぐうの音もでない。
マホちゃんの指示に従ってトラップを迂回する。
射手の方を見ても動きがなかった。
なるほど、確かに人形だ。
決められた動作以外はせず、応用も効かないらしい。
「ここはまだ下層だ。焦らずに私の後ろをついてこい」
いいな、とマホちゃんは言った。
さすがにうなずく。
頼ってばかりという点は気に入らなかったが実際おれはマホちゃんたちほど経験も実力もない。
なにより初ダンジョンなのだから余計なことをして脚を引っ張ることの方が問題だ。
そうは思うが、やっぱりもやもやした。
「…見てろよ」
マホちゃん達に聞こえないように呟いた。
せっかくの初ダンジョン。
そこでなにもせずに終わるなんてもったいなさ過ぎる。
自分に出来ることを。
それだけを考えて実行する準備を整えることを決めた。




