男には超えちゃいけない一線があると彼は思った('Д')
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「お姉ちゃん…!」
まっさきに反応したのはカホだった。
詰め寄るようにマホちゃんに近づくと、その手足に触れる。無遠慮かつ無造作な動きだったが神官のスキルを持つ彼女が触れるということは全く別の意味を持つのだろう。
マホちゃんはマホちゃんでどこか得意気な顔で、されるがままになっている。
「ほんとだ…! ほんとに生身の手足になってるっ!」
ほぼ悲鳴みたいな甲高い声でカホは叫ぶ。よほど興奮したのか、そのままマホちゃんに抱きついた。
「よかった、よかったようおねえちゃぁん!」 「こらこら。こんなとこで泣くやつがあるか」
マホちゃんもカホを受け入れるように抱きしめた。麗しい姉妹愛ってやつか。
正直急展開過ぎて置いてけぼりを食らってる気分だったが、まぁ、とりあえずよかったと思うことにした。
少なくとも、このまま殺されることはなくなったみたいだし。
「ほんとに治ったんだ」
独り言みたいなつぶやきに思わず声の主を見た。
…驚いた。ここまで険のとれた表情を久し振りに見たからだ。
今までの殺気が嘘みたいに思えるほど純粋な表情。これがモンスターだろうとなんだろうと問答無用に殺せる存在だとは誰も思うまい。
…まぁ、今更だけど。
マホちゃんの手足がなくなったことをこいつらは知ってたんだな。
「そうだ。私は冒険者に復帰することにした。だから、ハチは私のものだ」
「いや、なんでだよ」
ドヤ顔で意味不明なことを言うおばさんに反射的に突っ込んでしまった。
ようやく場の雰囲気が和らいだんだ。
これ以上訳の分からない言葉で微妙な空気を作られてたまるか。
「む。なんだ、私のものになるのが不満なのか?」
「当たり前だろ。いつおれがマホちゃんのものになったんだよ」
「なるほど、いまここで馴れ初めを話せと。これが羞恥プレイか」
「やかましいわ。…もう、ほんとマホちゃんってこんなキャラだったっけ?」
ルシエルの話だとおれのせいでこうなったらしいが、それにしたって今までとは違いすぎる。
おれの中ではマホちゃんは自分に厳しい理想的な大人ってイメージだったのに。いや、その一番大事な部分がバグったんだから当然と言えば当然なのかもしれない。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん、なんだ?」
「ハチとパーティーを組むの?」
「ああ。私と二人でな」
ミキの問いかけにマホちゃんはテンポよく答えた。
あれ、大和田さんは?
そう聞きたかったが、やっぱり場を混ぜっ返すのも面倒なので黙っておくことにした。
「そっか。じゃあさ」
「お姉ちゃんもハチもうちのパーティーに入らない?」
それは。
おれにとって最も踏んじゃいけない地雷だった。




