引いたら負けだと彼は思った('Д')
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「てめえ…!」
強引に肩を掴まれ、そのまま引きはがされる。
随分距離があったはずなのに一瞬で詰められた。その事実に驚いたが、それも当然と自分自身に言い聞かせる。
勇者。
おれなんかとは比べものにならない存在が目の前に顕れた。
「随分と乱暴じゃねえか。言っとくが、おれが何かしたわけじゃねえぞ?」
「うるせえ! おい、しっかりしろ! 大丈夫かっ?」
ミキは呼びかけに応じることなくがたがたとふるえている。目の焦点もあっておらず、顔色はさらに悪くなっていく。
ミキは呼吸すら苦しいのか胸元を押さえ、うずくまってしまった。
「とりあえず救急車を…」
「よけいなことすんじゃねえっ!」
スマホをポケットから取り出した刹那、軽い衝撃が走った。
背筋に寒気が走った。
スマホが半分になっている。比喩じゃなく、真っ二つに割れていた。
握った部分は残っていたが残りは彼方に飛んでいったようだ。
…やばいな、こりゃ。
ミキの変貌にパニックになりかけていた頭の中がどんどん冷静になっていく。
「カホっ! はやくしろっ!」
「う、うん!」
ようやく追いついたもう一人の少女がミキの傍らに腰を下ろした。
もちろんこいつも知っている。
源夏帆。
おれの幼なじみで、マホちゃんの妹。
そして、勇者パーティーの一人。
神官。
およそ日本人には似つかわしくないスキルだが、彼女はそんな常識を越えて、様々な奇跡を起こす。
その最たるものは、
「落ち着いて、ミキ…! 大丈夫だから!」
癒し手としての力。
カホが手をかざすだけで大抵の病気や傷は癒される。実際に目にするのは初めてだったが、ミキの容態がどんどん落ち着いていくのを見るとそれが建前でもなんでもない事実だってことがわかった。
いや、実際すげえ。
ふるえていた身体は元にもどり、真っ青だった顔色も血色が良くなった。さすがに立つことまでは出来ないようだったが、ミキはしっかりと呼吸をしている。
「これで大丈夫。少し様子を見た方がいいけど」
「そうか、よかった」
安堵の息が漏れる。
とにかく落ち着いてよかった。なにがしたかったのかまるでわからないが、さすがにあのままぶっ倒れられたんじゃ後味が悪すぎる。
むしろ、おれの方が被害者みたいなもんだ。いきなり変なスキルを使われ、尋問され、その上なんか悪いことをした雰囲気になっている。
その辺の事情を説明しようかと身を乗り出して、
「てめえはなんでここにいんだよ…?」
全身が硬直した。
凄まじい殺気。中層のモンスターが発したのとは比べものにならないくらいの重圧が襲っている。
しかも二つ。
一言でも間違えればまず間違いなく殺される。相手にその気がなくともなにかの弾みでおれは死んじまうと確信できた。
だから、
「散歩だよ。文句あんのかよ?」
全力で受けて立つことにした。




