「ダンジョンマスターを目指す気はありませんか(*^-^*)」と彼女は言った。
ブックマーク一件、評価もいただきありがとうございました!
最高評価までいただいて恐縮しきりです。
今後も継続的に投下していきますのでよろしくお願いします。
何度か画面を見直して、ようやく目の前の現実を受け入れられるようになった。
アプリを一度消し、電波の表示を確認。やはり圏外。さきほどから何も変わっていない。
正直内容をみる限り悪戯か何かにしか思えないがこのダンジョンで起きたって時点で嫌な予感しかしない。
なにもないどころか、もしかしたら結構な厄ネタに捕まっちまったんじゃないか?
「おなかが空きましたぁ(*^_^*)」
まさかの催促。
いや、さすがにすぐに食い物を出せって話じゃないだろう。背後に感じる圧力も相まって、どうやら自分の存在を主張しているのだと理解した。
そう、さすがにこれが誰が送ってきたのかは薄々理解しているのだ。
ただ、それを認めたくないだけだ。
そっと背後を見る。
「あ」
目が合った。
透明な板越しに、目を閉じていたはずの少女の目がしっかりと開いている。
碧い瞳。
端正な顔立ちと意志の強そうな瞳がじっとこちらを見つめている。
握ったスマホがふるえた。
「お・な・か・が・空・き・ま・し・た・ぁ(*^-^*)」
「やかましいわ!」
どんだけ腹減ってんだ、この女…!
思わず突っ込んでしまった。
我に返る。
透明な板越しの彼女に変化はない。
ただ意志の強そうな瞳がまっすぐにおれを見ているだけである。
その意志の強さが腹が減ったって訴えだとはあまり思いたくなかったが。いや、こんなとこに閉じこめられているからこそ、なのだろうか。
「あー、その聞こえてる、ますか? 聞こえないか? くそ、面倒くせえな」
一方的に意志を伝えられてもなにもできない。
ジェスチャー(?)も交えて意志疎通を試みる。しばらくして、スマホがふるえた。
「あなた、馬鹿なんですか(*^-^*)」
「うるっせえ!」
怒鳴り返す。
人が必死にコミュニケーションとろうとしてんのになんだこの女!
「怒鳴らないでください(*^-^*)」
「…聞こえてるんじゃねえか」
無駄なことをさせやがって。
なんだかまともな対応をするのも面倒になってきた。とりあえずいくつか質問してみることにする。
「っで、あんた誰だ? 日本語わかる? てか人間? なんでこんなとこいんの? つーか腹減りすぎじゃね? 今まで何食ってたの? もしかして何も食ってない?」
「私は…質問が多すぎ。慣れてないんだから一つ一つにして」
怒られた。起こると絵文字も使わないらしい。
慣れてないってのはタイピング(いや意味が違うか)のことだろうか。絵文字使ってるくせしやがってなんだか面倒くさい奴だ。
ただここまで日本語が達者だと二番目の質問はいらなかった気がする。
心なしか妙に視線が厳しくなった気がする。
「わかった、わかりました。んじゃ、君は誰?」
「私はルシエル。あなたは?」
ちょっと感動。
意外なことにおれに興味を持っているらしい。しかもコミュニケーションもとれるみたいだ。
未知との遭遇というには若干気色は違うが、まぁ、こんだけの美人と会話が出来るのはうれしい限りだ。
あと、今更だがなんでこんなに絵文字を使いこなせてんだろう。
「おれは坂本八郎。みんなはハチって呼ぶ」
「私もハチって呼んでいい?」
「ああ、いいよ」
「私のことも名前で呼んで」
「わかった。よろしく、ルシエル」
「うん」
不思議だ。
目の前の少女の表情はまるで変わっていないはずなのに微笑んでいるように見えた。
「ハチ、あなたに聞きたいことがあります」
「なんだよ?」
改まった問いかけに、気軽に応じた。
彼女は表情をいっさい変えないまま、
「ダンジョンマスターを目指すつもりはありませんか(*^-^*)」
そう言った。