カレーは最高ですわと彼は思った('Д')
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今日の夜も投稿予定ですので、是非ご覧ください!
「おはよう、寝坊助さん」
全身に鳥肌が立った。
目覚めは驚くほどはっきりしていて、瞼を開けた時にはこれまでのことがはっきりと思い出せた。
なのに、なんだこれは。
おれはまだ自分のベッドに寝ていて、何故かマホちゃんが添い寝している。
マホちゃんは楽しそうにおれを見ていた。
「何が、え、何これ」
「そう焦るな。ここはお前の家だ。朝食の後、急に眠ってしまったんだ。私がベッドに運んだんだぞ?」
偉いだろ、とでも言わんばかりに笑みを浮かべるマホちゃん。
なんて白々しい。
あんなに急に眠くなるなんてありえない。一服盛ったくせしやがって。
「それは、ありがとう?」
「どういたしまして」
けれど反論する気はなかった。
そんなわかりきったことを指摘しても意味がないと思ったからだ。というか、指摘した瞬間地雷を踏むことになると本能が言っている。
なんだか今日は危機察知能力に磨きが掛かっている気がする。
「さて、とりあえず起きるか。もう昼だからな。まずは昼食からいただこう。夢の中で大変だったろうから、腹も減っているだろう?」
「え? ああ、いや、え? 大変だったって」
「随分魘されていたからな。よっぽどしつこい尋問だったと見える」
やっぱり確信犯じゃねーか。
マホちゃんはいたずらっぽく笑ってから、起きあがって部屋を出た。
もはや突っ込む気力も失って、おれはただマホちゃんの後を追う。
「暖めるから少し待っていろ。人参はもう食べられるな?」
「それ小学校の話だろ。もう食えるよ」
「それはよかった」
マホちゃんは冷蔵庫から大鍋を取り出し、ガスコンロにかける。すぐにカレーのおいしそうな香りが漂ってきた。
とんとんと包丁がまな板をたたく音。台所の背中がどこか優しげで、おれは何だか目が離せなくなった。
…いや、そりゃそうだろ。
未だにマホちゃんがここにいる理由もわかんないし、飯を作ってる理由もまるでわからない。さっき一服盛られたのにまた食わなきゃいけないのかって疑問まである。
なによりもさっきの夢。
あれは一体なんだったんだ。
「あいつのことが気になるか?」
ぼんやりと考え事をしていたらマホちゃんは急にそんなことを言った。
なんだろう、背中に目でもついているんだろうか。
「あいつって?」
「夢の中で会っただろ。あいつはダンジョン庁の職員だ」
「職員?」
「そう、職員だ」
不思議な出来事だと思っていたことが一気に現実味を帯びていく。というか、ダンジョン庁だって?
「ルシエルとスカーレットを連れてった連中か!」
「その通り。だが、安心しろ。さっきも言ったが彼女達は命の恩人でもあるからな。人に化けないようには言っておいた」
なるほど、だからか。
あの女にルシエルとスカーレットのことについて何も言わなかったのは正解だった。
武器が人間になるとか怪しすぎて尋問続行不可避だったろうからな。
「どれ、出来たぞ」
大皿に盛られたカレーが湯気を上げている。
マホちゃんは手際よくテーブルへ皿を並べていく。カレーの他にサラダもあり、彩りが随分と華やかだ。
「いただきます」
スプーンを握り、カレーを掬う。
うまい。
少し辛かったがあつあつでジャガイモがでかいのがうれしい。挽き肉を使っているのか随分と旨味がしみこんでいて、食欲が進む。
がつがつとカレーを食っていると、マホちゃんが楽しそうにおれを見ていた。
「なに?」
「いや、食べ方は変わらないもんだなと思ってな」
一瞬意味がわからなかった。
が、すぐに頬が熱くなるのを感じる。カレーを食ったからじゃない。けれどそれを悟られるのも面白くなくて、そのままがつがつとカレーを食った。
「おかわり」
「はいはい。サラダも食え」
「あい」
そんなこんな昼食を平らげていると、
「今後のことを話そうと思う」
マホちゃんはそう切り出した。
まだ四杯目にがっついていたおれを見て、
「これからは私とお前でパーティーを組む。早速明日からダンジョンに潜るぞ」
そんなことを言った。




