あっけない決着
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触れただけわかることがある。
サッカーの時はそういうことがよくあった。ボールを受け取ったとき、あるいは相手がボールを持っていた時。
前者は相手からのプレスを背中で受け止め、後者はおれ自身が相手の背中へプレスをかける。
ボールがかかってるから当然ガチンコ勝負。
ただ全力で押し合いへし合いになることもあれば、駆け引きで相手を出し抜く場合もある。
けれど、大抵の場合。
お互いの体が触れた時点でどちらが優勢なのかは一瞬でわかる。
この時も似たような体験をした。
跳躍し、相手の顎を正確に蹴り抜いた時に。
かなわない。
そう、思い知らされた。
身長は倍近くもあり、体重は数倍。人型であっても人間とは根本的に違う構造をしたモンスターに、決して肉体性能では勝つことができないことがわかった。
それは、相手にとっても同じだったらしい。
「GAAAAAAAッ!」
オークはあれほど警戒していた筈なのに、急に襲いかかってきた。
当然障壁は復活していない。
そんなものが必要ないことを悟ったのだ。自分の肉体にこんなチビがなにしたって通用しないことを身を持って理解したのだ。
棍棒が、躊躇なく振り下ろされた。
「…はっ!」
わかっていた。
そんなことはずっとわかっていたんだ。
おれは体格的に優れた訳じゃなければ、運動神経があるわけじゃない。
けれど、そんな奴でも勝つことを考えれば、いくらでもやり方を思いつく。
だから、あのスキルを選んだんだ。
結局、一回使ったらなくなっちまったが。使い捨てかよ、くそったれ。
それでも、その動きは覚えている。
「GIaッ?」
オークが戸惑ったような声を上げた。
跳躍と回転。
自分の本来の脚力にルシエルとスカーレットの能力を上乗せして交わしたのだ。もちろん、オークが手を出せず、おれにだけ当たる場所へと飛んだのだ。
【飛燕脚】とは字の如く。
燕のように自由に、捕らえることのできない様を言い表している。
例え、どれだけその巨大な腕を伸ばそうとも。
決して、燕を捕らえることは出来ない。
「GIAAAAAAッ!」
もちろん、だからといって勝てるとは限らないが。
何度も何度も蹴りを入れようと、何度も拳を突き立てようと。
決して化け物は怯まずに、おれを追いつめてきた。
当たり前だ、一度掴まれたらおれの負け。
けれど、おれは何度蹴ろうが殴ろうが絶対に致命傷を与えることはできない。
どころか、化け物の攻撃は苛烈さを増していく。最初の頃こそ棍棒を振りかぶるだけだったが、時間が経つにつれて拳や足も飛び出してきた。
広い場所に出ればさらに過激さを増してく。
周囲にあった机や椅子、屋台。果ては周囲に転がる死体までも投げつけてきた。
そのすべてを交わし、適切な距離感で蹴りを入れる。
まるで作業だった。
いや、まさしく作業だったのだ。
『ハチ、よくやった』
脳内に直接マホちゃんの声が響く。
直後、化け物の動きが止まった。
脳天に穴が空いている。
銃声はなく、ただ当然のことのように、化け物はそのまま背後に倒れた。
大きく息を吐く。
作戦は上手くいった。
おれは囮で、マホちゃんが狙撃手。
それだけのシンプルな作戦。
なのに、不思議と達成感もなにも感じることはなかった。




