決戦
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【穿つ者】。
それがスカーレットの本質をもっとも的確に表すスキルである。
【超回復】やほかのスキルはあくまで補助的なもの。極論、このスキルさえあればスカーレットは己の本分を全うできる。
このスキルの効果は文字通り、どんな対象でも穿つことができること。
これが、この状況下で最も重要な点なのである。
「 っ!」
化け物が咆こうを上げる。
おれに気づいたからじゃない。
ようやく獲物の抵抗が消えたからだ。あれだけ上がっていた悲鳴が消え、全力で抗がっていた四肢が力を無くしている。
タイミングはばっちりだ。
化け物は間合いに入ったおれに気づかない。その無駄にでかい逸物を出すのに夢中で、背後に迫る脅威への対処は不可能。
おれは化け物の背中へ向けて全力で拳を放った。
硝子が割れるような甲高い音が響く。
肉や骨を殴った感触とはまるで違う。拳に感じた手応えに、おれはさっきマホちゃんから言われたことを思い出す。
『中層以下のモンスターが厄介な点は、奴らには自身を守る障壁があることだ』
このオークも例外じゃない。ダンジョン内の人間を殺戮するには3メートルの巨体と肉体能力だけでは足りないのだ。攻撃力だけではなく防御力。こいつは銃弾ですらものともしない無敵のバリアーを持っているのである。
だが、
「GIAAAAAAAAAAAAッ?」
それもこの瞬間までだ。
拳が化け物の背中をえぐる。
驚いた。どうやらこの化け物、背中にまで十分な脂肪を蓄えていたらしい。
おそらくは内蔵にまで達していない。骨の感触すら無かったから、それほどダメージを与えられなかったか。
けど、目的は達成した。
「GIAAAAAッ!」
化け物がもの凄い目でにらみつけてきた。
そのまま背中越しに腕を振るってくる。巨体に似合わない俊敏さだったが、それでも体勢が不十分だったせいかなんなくかわすことができた。
距離をとり、にらみ合う。
化け物は少女をそっと傍らに降ろして、立ち上がった。少女はまだ生きている。四肢を投げ出して全身に力が入らないようだったが、それでも懸命に呼吸をしていた。
「さて、と」
一つ深呼吸。
化け物の視線を受けながら、相手の挙動に目を向ける。
どこから取り出したのか、棍棒を構えている。その巨体と肉体能力に任せて襲いかかってくるかと思ったが、慎重におれとの間合いをはかっていた。
背中のダメージが思ったよりも大きいのか、それとも、獲物を奪われるのを恐れているのか。
いや、もっと単純なはずだ。
「障壁を張り切れてねえんだろ?」
ならば、と一歩踏み込む。
化け物は動かない。いや、違う。一瞬だが、確かに怯んだ。
その一瞬を見逃すつもりはなかった。
「GIッ!」
跳躍。
肉体の軸を意識し、全身を回転させる。スキルは消失したが、もともとおれの肉体で行えることだ。本来の技のキレはなくとも真似事ならできる。
おれはオークに向かって、全力の蹴りをたたき込んだ。




