決戦前
おはようございます!
徐々にペースアップ出来るようになりました。
今後も定期的に投稿していくので何卒よろしくお願いします!
作戦は単純明快だった。
不意打ち。
相手が油断している間に一瞬で決着を着ける。
オークの生態や習性はネットでも書籍でも大まかに解明されている。なにより中層の代表的なモンスターであり、人型に近い形状である点が攻略する手順を明確にしている。
オークが人を襲うのは食事が目的ではない。
残虐性の発露、あるいは縄張り意識による生存闘争。
ダンジョンを自分のものだと主張するための手段でしかない。
だからこそオークは人間を確実に殺戮する。本能のままの行動だからこそどこまでも残虐になれる。
それは同時に、理性の行動でないからこそ隙が生まれることを意味する。
…正直小難しすぎて意味がわからない。
諭すようにおれに語ったマホちゃんには悪いが、そんなことを言われてもまるでぴんとこなかった。
目の前の光景を見るまでは。
「……っ! ……っ!」
悲鳴が聞こえる。
視線の先で巨体が何かを押さえ込んでいるのが見えた。全身を押しつける動きが妙に生々しく、おぞましさにすぐにで飛び出しそうになった。
「まだだ」
マホちゃんはもの凄い握力でおれの肩をつかんでいる。
片手には件の銃。
油断なく巨体を見つめ、視界の端でおれの様子を捉えているようだった。
ここは入場ゲートのロビー。オークはその中心に居座って、情事を楽しんでいる。おれとマホちゃんは入場口からオークの様子をうかがっている。
まだ、気づかれていない。
「位置はいい。だが、ああまで密着されては手をだせん。どうやらまだ入ってはいないようだ。様子を見るぞ」
入ってはいない、という発言に吐き気すら覚えた。
おれは肩を掴むマホちゃんの手を握った。
「ハチ」
「無理だ。すぐにでも助けよう」
これ以上、あの化け物が生きていると思うだけで自分が許せない。
そういう思いを込めて見つめたが、呆気なく却下された。
「だめだ。まだ周囲を警戒している」
「…いつならいいんだよ」
「獲物の抵抗がなくなる瞬間が一番油断する」
それは手遅れって言うんだろうが…っ!
マホちゃんの手をはねのけようとして、できなかった。
「だめだ。逃げられたら、今度こそ面倒なことになる」
一つ、深呼吸。
言っていることはわかった。わかったが納得できるはずもない。
なら、状況を動かせばいい。いや、今の現状をむちゃくちゃにしてやろうと叫ぼうとして、
「私に任せろ。一撃でしとめてやる」
膝から崩れ落ちた。
力、だろうか。
押さえつけられたまま動けなくなり、声を出すこともできない。
見下ろす視線に思わず息をのむ。
その瞳に炯々と炎が灯った錯覚が見え、おれは無意識に首を縦に振った。何度も。




