兆し
本日二日目の投下になります。
最近滞っていたので、できるだけ挽回していきます。
今日の夜か明日の8時までには次話も投下したいと思います。
「…逃げろ、ハチ」
聞き間違いかと思った。
けれど、マホちゃんの目を見て間違いじゃないことを確信した。
こんな状況なのに他人の心配をしてどうするんだ、と思ったがそれ以上にこの人を死なせてはいけないと思った。
いや、死なせたくないんだ。
おれが、マホちゃんを絶対に死なせたくなかった。
「スカーレットォッ!」
叫ぶ。
スカーレットは律儀にクソガキを抱えたままやってきた。このクソガキの頭をかち割ってやりたかったが、今はそんな場合じゃないと思い直す。
おれは頭の中でいくつか質問を組み立ててから口を開いた。
「お前のスキル【超回復】ならマホちゃんを助けられるかっ?」
「質問の答えとしては出来ます。けれど実際に出来るかと言われれば出来ません」
「なんで出来ない?」
「私のスキルは契約者であるハチにしか使用できないからです。他の方への貸与も譲渡もできません。もちろん契約者の変更も不可能です」
ふざけんな、と叫びそうになったがやめる。
だが、少しは希望は見えてきた。
「けど、お前の【超回復】ならマホちゃんを間違いなく治せるんだな?」
「ええ、それは出来るでしょう。彼女に私のスキルを使用できれば」
それで答えは十分だった。
次はルシエルに問いかける。
「ルシエル、今すぐにマホちゃんに【超回復】のスキルを目覚めさせることはできるか?」
『無理ね。適性もないし、死人も同然なのよ? こんな状況でそんな真似したら本当に死んじゃう』
「おれならどうだ?」
『は、なんで、あんたが? …いや、あんたならスカーレットから取り込めばいいだけだし。でも、駄目ね。あんたの体質を考えると折角スキルを手に入れてもすぐになくなっちゃうから無駄。借りるなら大丈夫だと思うけど』
「なら、おれから貸すってのはどうだ?」
『はぁっ?』
ルシエルが初めて声を荒げた。
そこまで無茶苦茶を言ったつもりはなかったが、どうやらよほど的外れなことを言っているらしい。
けど、それっておかしくないか?
「おれはスキルを借りられて、なんでマホちゃんは借りられない?」
『それは、だから契約者だからできるだけ。契約者の特権。だいたいスキルってのは貸し借りできるものじゃないから』
「でも、おれはできるんだ。なにか抜け道だってあるんじゃないか?」
『あのね』
ルシエルは呆れた様子で声を出した。
『世の中そんなに都合良くないの。あたしがスキルを目覚めさせるのだって反則なの。チートってやつ? そんであたし達みたいなダンジョン攻略後に手に入るアイテムだからこそ、スキルの共有もできる。これ以上を望むのは贅沢ってもんじゃない?』
「なら、合成はどうだ?」
『あんた、あたしの話聞く気ないでしょ』
そんなことはどうでもいい。
チートだろうが、反則だろうがなんだっていい。
おれは、なにをしたってマホちゃんを救いてえんだ。
「おれの考え違いかもしれないが、合成なら目覚めさせるより負担が少ないんじゃないか? もともと持ってるものだし」
『そんな基準ないわよ。…まぁ、確かに合成の方が負担は少ないけど。でも、もともと回復系のスキルは希少っていうか、誰でも昨日として持ってるからスキルほどの効果は期待できないし…あれ?』
「! どうした?」
ルシエルが動揺したのがわかった。
おれを通してマホちゃんを見て、何かに気付いたらしい。ルシエルはおれの問いに答えない。その間にルシエルの動揺はどんどん大きくなっていることだけはわかった。
『これ、おかしい。なんで?』
『なんで、この女、【飛燕脚】を持ってるの?』
足がないのに、とルシエルは言葉を締めた。
読んでいただきありがとうございます!
今後も投下していくので何卒よろしくお願いします!




