マホちゃんは言った。
本日二回目の投下!
明日も投下したいと思います!
「信じられんな」
おれの話を黙って聞いていたマホちゃんは最後にそう呟いた。
まぁそうだろう。
おれだって当事者でもなけりゃ信じられる筈がない。どっかの誰かが妄想した馬鹿話。それくらいには常識外れだってのはわかってる。
けれど、昨日の晩の出来事も今目の前にある状況も全てが紛れもない現実なのだ。
それを、逃すわけにはいかないんだ。
「でも、全部本当のことだ」
「メンドウくさい。疑ってるなら見せてあげればいいじゃない」
ほら、とルシエルが手を差し出してきた。スカーレットが無言で右手に指を絡めてくる。
論より証拠。
なるほど、そりゃ簡単だ。
そう思って彼女たちの手を握ろうとしたが、
「やめろ」
マホちゃんに何故か止められる。
今更過ぎる制止に疑問を覚えた。おれの話はさっきから興味津々だった連中にも聞かれていたし、なによりおれの話を信じているわけではないことは視線でわかった。
「話はわかった。だが、何故彼女達を連れてきた?」
「は? いや、なんでって」
突然の質問に思わずオウム返しをしてしまった。
まるで予想していなかった問いだ。おれがなんと答えればいいのかわからずにいると、
「なに当たり前のこと聞いてんのよ。あたしはこいつの武器なのよ? ダンジョンについてこなくてどーすんの?」
ルシエルは小馬鹿にするようにマホちゃんが言った。が、マホちゃんはそれを無視しておれに再び問いかけてきた。
「何故連れてきた?」
真っ直ぐな瞳でそう問いかけられて、さっきとは違う意味で言葉が出なかった。
ここまでくればさすがにわかる。
マホちゃんはおれを叱ってるんだ。
「…いいか、八郎。よく聞け」
「お前がやったのは、単なるズルだ。そんなことで認められて嬉しいのか?」
そんなことを、憐れみの籠もった瞳でマホちゃんは言った。
※
「ダンジョンに飲み込まれたのは不幸だった。襲われたのも不幸。そこで彼女に出会い、救われたのは紛れもない幸運だった。だが、そこから先は間違っている。お前はズルをしてここまで来た」
マホちゃんの目がぶれることなくおれを見据えている。
表情は真剣そのもので、だからこそ本気で怒っているのがわかった。
「誰もがダンジョンへ憧れる。お前たちの世代だけじゃない。私たちだって、お前らより下の世代の人間だって憧れている。だが、そこに立ち入ることが出来るのは選ばれた人間だけだ。その意味をお前は理解しているんじゃないのか」
マホちゃんはゆっくりと言葉を続ける。穏やかで柔らかい口調だったが、おれが口を挟む隙間を一切見せない。
「お前が努力をしなかったとは言わない。だが、幼少期から冒険者となるために研鑽を積む人間を知っているだろう? そういった人間を私たちのような教師が見いだしていることも。世の中が才能だけだとは言わないが、才能がなければ勝負にならない世界も存在する。それがダンジョンだ。必要な才能もこれ以上ないほど明確になっていることもわかっているはずだ」
才能。
努力。
選ばれた存在。
そんなことはわかってる。受験だってそうだ。あれほど明確に人間を選別する試みもない。
ダンジョンにおいてはスキルが全て。
それを持たない人間はダンジョンに挑む資格がない。
そんなこと、これまでどれだけ散々言われてきたか。
「憧れの存在になれなければ人生に価値がないと思うか? それは絶対に違うぞ。お前の年代で挫折を味わう人間がどれだけいることか。だが、周りを見てみろ。世間は広い。お前の先輩にだって冒険者に憧れていたが全く別の進路に進んだ人もいるだろう」
「お前がやっているのは、そういう人たちを踏みにじる行為だとは思わないのか?」
だから、そんなことを言われて、おれはどんな顔をすればいいって言うんだよ。




