いざ、ダンジョンへ
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「…一体、どうなってるんだ」
土曜の朝。
学校の校庭に集合したおれは、何故か抜き打ちでスキルの検査をやらされていた。もちろん、マホちゃんの独断である。
前回のような本格的な検査ではないものの、観察眼程度の低ランクスキルの判別であれば十分過ぎる代物だ。
だからこそ、マホちゃんは困惑している。
おれのスキルが観察眼じゃなくなっていたからだ。
「飛燕脚だ? なんだ、この無駄にかっこいい名前は」
検査結果が表示されたスマートフォンをのぞき込んだまま、マホちゃんは呻くように呟いている。
おれはもちろん直立不動だ。
顔には愛想笑いを浮かべてるように努力しているが、相当ひきつった笑顔になっているはずである。
予感が的中した。
まさか抜き打ち検査までやり出すとは思っていなかったが、おれのスキルについて疑問を抱くことはわかっていたのだ。
だからこそ、まったく別のスキルを覚えた。
それこそ、方向性がまるで違うスキルを。
「いや、最近テコンドーにはまってて。動画サイトとか見てたら、おれにもできるかなって練習してたんだ」
「その足でか?」
「おい」
「すまん、本音が出た」
「まったくフォローになってねえ!」
すまんすまん、と全く心にも思ってない様子でマホちゃんは言う。実際思っていないんだろう。
マホちゃんは昔からそうだった。
子供の頃から思ったことをストレートに言ってしまう。そのくせ、悪意がないからなんなのか、周囲から反感を抱かれることがない。おれも含めて。
たぶん、外見的な部分も理由の一つだ。
凛とした眉毛と強い意志を宿した大きな瞳。真一文字に結ばれた口元とすっと通った鼻筋。美人というよりもハンサムと言った方がいい顔立ちは男女問わずに人気がある。
身長も高く、足も長い。日本人離れしたスタイルは、なるほど、おれの足の長さを馬鹿にするのも当然だと思えた。
ただなによりもマホちゃんがすごいのはその性格というか雰囲気だ。
なんというか、なにをいってもまともなことを言っているような雰囲気になるのである。
「ハチの足が短いのはわかっていたが、これは少しおかしいな。このわずかな日数で新たなスキルを得るなんて」
「おれの足が短いの行りはいらねえだろ」
「なにをした?」
じっと見つめられる。
叱るでもなく、疑うでもなく、純粋に問いかけてくる視線。
迫力は確かにあるが強制される感じとはまた違い、真面目に答えなければならない気がしてくる。言葉にしにくいが、ここがマホちゃんのすごいところだ。
少しでも誤魔化すことが許されない雰囲気ではなく、誤魔化すこと自体が許されない気になっちまう。
だから、おれは誤魔化さずに真実を語った。
「練習したんだよ。ここ数日、ずっと」
真っ直ぐに答える。
マホちゃんはそれを嘘だとは言わなかった。けれど、黙っておれを見続けている。
…はいはい。わかってるよ、そういうのは実際に見なければ納得できないんだろう。
けど、その場でいくら跳び蹴りを見せたところでマホちゃんを納得させられるとは思わなかった。
「なぁ、マホ先生。試させてくれよ。おれだって本気で冒険者になりたいんだ。そのために準備してきたし、努力もしてきた。確かにスキルは変わったかもしれないけど、それでもスキルはあるんだぜ?」
まっすぐにマホちゃんを見つめて言う。
マホちゃんはまたしばらくおれを見つめていたが、深く息を吐いた。
「わかった。まずはダンジョンに行こう。そこで、実戦だ」
それだけいってマホちゃんは自分が乗ってきた車に向かう。
駐車場は校舎から離れた場所にある。後ろを付いていこうとすると、「そこで待ってろ」と言われた。
「他にも運ぶ荷物がある。すぐに来るから」
マホちゃんの背中が遠くなっていくのを黙って見守る。見えなくなった時点ゆっくりと腰を下ろした。
「…しんど」
やばかった。
さっきのやりとりはいくら何でも無謀に過ぎた。
『よかったじゃない。とりあえず予定通りよ』
「とりさえずは、な」
脳内に直接響く声に答える。
昨晩から何度も何度も繰り返し聞かせられたおかげで気持ち悪さはなくなったが、それでも十分に不快感がある。
「けど、こっからが本番だ。頼むぜ、ルシエル、スカーレット」
『もっちろん、大船に乗ったつもりでいなさい』
『任せてください』
左手にはめた二つの指輪に触れる。
おれ一度伸びをして、空を見上げた。
ようやく、おれの冒険がはじまるんだ。




