起死回生の登場シーン(*^-^*)
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赤い槍が滑るように迫ってきた。
一瞬、反応が遅れる。
が、それはおれの体に触れることなく空間を貫いた。
今のはやばかった。
今までの力任せの突きじゃない。そういうのとは全く異質のもの。放った本人もそれに気づいたのだろう。不思議そうに槍の穂先を見ている。
この間はやばい。
明らかにコツを掴みかけている。
「なぁ、少し落ち着こうぜ。疲れたし、休憩しないか?」
ゆっくりと諭すように言う。
おれ自身の息が上がっていたのもあるが、このままの流れだと思った以上に早く彼女の槍はおれを貫くだろう。
だからせめてもの時間稼ぎ。
彼女自身も動きを止めたこのタイミングを逃せば、今度こそ殺される。
が、彼女はおれの言葉に反応しない。
聞こえていないはずはないが、それでも全く反応を示さない。
と。
「ああ、なるほど。こうですか」
少女は腰だめに構え、一つ二つと宙に突きを放つ。
ああ、ほんと嫌になる。
これまでの力任せの時とはまるで違う風切り音。見えていたはずの赤い軌跡が完全に消えている。
もう時間がない。
彼女がその気になれば、一瞬で勝負が着くだろう。
彼女自身それを自覚して、余裕をもった足取りでこちらへ向かってきた。
「それでは、いきます」
一つ深呼吸。
ことここに至って時間稼ぎは無意味だ。
なにより、生き残るためにすべきことは逃げることじゃない。
ピンチはチャンス。
あのクソうざい監督もよく言ってたじゃないか。窮地の時こそ食らいつかなきゃいけない。
おれは自分自身に言い聞かせ、
「うおおおおおお!」
叫び声を上げて突っ込んだ。
「え?」
驚いた表情を浮かべる少女。
けれどそれも一瞬。
彼女は槍を腰だめに構え、自身の間合いを作る。
この時点でにおれの想定を上回られた。
てっきりビビって動きが止まるかと思ったに、このままじゃ串刺しにされる。
だから、スマホのフラッシュを点けた。
「きゃあ!」
見た目通りのかわいらしい声。
化け物に通じるのか不安だったが、思った以上に効いた。
視界を失った少女は槍を放つことも出来ず、身を硬直させた。おれはその隙をついて彼女の傍を通り抜ける。
そのまま駆け抜け、背中を預けた。
「ひ、卑怯ですよ!」
何とでも言えばいい。
腹の底からそう思い、ついでに追い打ちをかけることにした。
「これくらい予想つくだろ。気づかないそっちが悪い」
「所詮、お馬鹿ちゃんはお馬鹿ちゃんだな」
全身が総毛立った。
明確な殺意が籠もった一撃が迫る。
見ることも反応することもできない。
おそらくはこれまで放った中でも最高の一撃が、おれの腹を貫いた。
そして、おれの背後にあるガラスまでも砕いたのだ。
「あ」
少女の表情が凍り付く。
背後でガラスが割れるようなあり得ない轟音が響き続いている。
まずは賭に一つ勝った。
まだ四つ賭があるのだが、
「お見事。…っていいたいけど、詰めが甘いわ。急所狙われたら終わってたわよ、あんた」
この声を聞いて少し気が楽になった。
二つ目の賭もどうやら上手くいったらしい。
ルシエルはさっきまでの無表情が一変し、ふてぶてしい笑みを浮かべている。
「それじゃ、さくっと終わらせるわよっ!」
ルシエルはそう言って少女と向き合った。
どうやら、三つ目の賭にも勝ったらしい。あとは、ルシエルが少女に勝てるかどうか。
四つ目の賭けにも勝てるように、とおれはそのまま座り込んだ。




