落ちこぼれの魔法使い
どうやら私にはあんまり魔法の才能が無いらしい。
当時7歳の私は学校で魔法を習い始めたばかりだったけれど、簡単な魔法もロクに使えずに先生がひたすら困惑していたのを覚えている。
幼馴染のライちゃんは励ましてくれたけど、そのライちゃんはクラスで一番魔法が上手だったから、あんまり気分は晴れなかった。
おかげで魔法学の評価はずっと最低評価で、クラスのみんなからは落ちこぼれだと馬鹿にされていた。
つまらなかった。毎日が憂鬱だった。
学校なんて早く終われと毎日思っているけれど、家に帰ったところで居心地が良いわけではないので、いつも家に帰って鞄を置くとさっさと家を飛び出して近くの浜辺で遊びに出かけていた。
『異界の浜』と呼ばれるその浜辺は泳ぐには向いていないとかで夏になっても人っ子一人いないので、一人になりたい時はいつもここに来る。
『異界の浜』なんて変な名前で呼ばれているのは、ここには色んな物が流れ着くからだ。
何か文字のような物が書かれた柔らかい金属性の容器だったり、キャップの着いた透明な水筒のような容器だったり、ともかく珍しい物がいっぱいだ。
何年か前に研究者達がここに流れ着く物を調べたそうだけど、残念ながらほとんどゴミばっかりだったそうで、それ以降この浜に来る人はいなくなった。
私はそんなゴミ達に片っ端から解析魔法『アナライズ』をかけて遊んでいた。この魔法は私が唯一使うことができる魔法だ。
文字通り対象の物を解析することができるのだが、本来は冒険者が宝箱の中に罠が仕掛けられているかどうかなどを調べるために使ったりする物で、日常生活で役に立つような物ではなかった。
結果はだいたいは飲み物を入れるための「あきかん」だったり「ぺっとぼとる」のゴミだったけれども、当時はお宝探しみたいで楽しかった。
今思えばなんて寂しい少女時代だろうと思わなくもないが。
その日も私はそこで一人で遊んでいた。
夕暮れ時まで浜辺でゴミを漁って真っ黒になっていた私は、ふと波打ち際の方を見ると十数人の人たちが集まっているのを見つけた。
珍しいこともあるものだと思って近寄ってみると、そこにはクラスの子達の何人かと大人が2,3人いた。大人と言っても学校で見たことが無いので先生では無かったと思う。
子供達の中にライちゃんを見つけた私は、駆け寄って話しかけようとした。
その時だった。
突然辺りが真っ白になるぐらい海が光輝きだした。
私は目を開けていられずに、ぎゅっと目を閉じていた。
どれくらい目を閉じていただろう。
1分か。10分か。
どれくらい時間が経ったかわからなかったが、ふと物音が聞こえてきたので、おそるおそる目を開けた。
辺りはすっかり夜になっていた。
しかし、夜だというのに昼間のように明るい世界が目の前に広がっていた。
私は、そうしてこの世界に来たのだった。