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上官殿が何か企んでいる気がする件について

上官殿が千歳、神町、習志野の視察から帰ってきて一週間ちょっと。その間に周りの先輩方が季節外れの出向や出張で居なくなっていることに俺はとても嫌な予感を感じていた。


現在地は、市ヶ谷駐屯地だ。

俺は、中央情報隊本部、上官殿は陸上幕僚監部に所属しているから、同じ駐屯地に勤務していても、顔を合わせることなんてほとんどない。けど、上官殿が俺の直属の上司だったのは確かだ、それがいくぶん前の話でも。

階級は依然あちらが上なので上官殿で間違いではない。

それなのにいきなり呼び出しとは、嫌な予感が止まらない。が、上官命令は絶対だ。行かないわけにいかない。そんなことを考えているととうとう上官殿が待つ部屋に着いてしまった。

俺は覚悟を決めて部屋に入っていったのだった。




「警視庁 警備部に出向ですか。この時期に?」


意味わからん。てか、なんでや。何企んどる。あぁ、言葉乱れた。落ち着け!俺。


「そー、表向き人事交流ね。そのうち、あっちからも人が来るから。先にお前を向かわせるよ。裏向きは左翼監視要員の増強、よろしく。彼ら、おまわりさんの面を割るの早いらしくて公安部が全滅、応援要員の刑事部、警備部も着々と面が割れてるとか。で、こちらにも声がかかった。なんせ、駐屯地からなかなか顔を出さず、メディア露出もかなり少なく、色々謎に包まれている人間たちだ。まぁ、適任だな。これにかこつけてあっちに人を向かわせた訳だ。…スパイとして。お前もだよ?」


本条ミヅキ一等陸佐は悪い笑みを浮かべたのだった。


そんな彼女を見て、俺は盛大にため息を吐いて言った。


「アホですか!アンタ!こんなんバレたらタダじゃ済まないことくらい分かるだろ!本当の目的は何だ!」


「…不審な消え方をした人間の情報。とにかく早く欲しいんだ。もう、個人で調べるにはキツすぎる。それに時間もない。手段を選んでもいられない。」


「それでも、こんなことしていいわけがない。越権行為もいい加減にしろ、上官殿。」


「ふーん。上官に楯突くのか。っふふ。悪いが、お前には、本家命令出してでも動いてもらう。」


2人は見つめ…睨み合った。そして、


「っち!主筋の人間に、末端の人間が逆らえる訳ないでしょうが。やります。やればいいんでしょ!やれば。せいぜい生き残ってやりますよ。」


そんなことを言う俺に彼女はニコリと微笑み、

「一ノ瀬琉一等陸尉、貴官の働きに期待している。大丈夫、ちゃんと人脈を広げてアンテナはっていれば、案外簡単に情報は集まるから。もしものことがあれば、ちゃんと骨は拾ってやる。さあ、行け。」

と言って俺を部屋から追い出した。

上官殿に一瞬でも見惚れた俺を蹴ってやりたいと思いながら、持ち場に戻る。

あぁ、これから忙しくなるとため息を吐いた。


かくして、俺の警視庁行きが決まった。


その半月後、俺は警視庁 警備部 警備第一課に正式に配属された。密命を抱えて…。


それは、ある年の10月を目前に控えた、9月下旬の出来事。


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