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第一次異世界大戦 裏話〜かの半神は暗躍す〜  作者: 一青アリア
その神、動く準備をする
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地球人召喚系拉致事件の被害報告の見せかけた半神の現実逃避1

正式な協力要請から数ヶ月、ミヅキは相変わらず、本業優先に活動しており、調査自体も一族の巫女たちに丸投げ状態であった。それでも、日本各地、世界各国から情報が寄せられ、徐々に事件の真相が浮き彫りになってきていた。

情報提供者が、ほとんど神々というかなり異常な状況が続く中で調査を進めている巫女たちは、落ち着いたものだった。彼女たちにとって、神という存在は身近なものだったのかもしれなかった。


巫女たちが黙々と情報処理をしていると部屋に一羽の鳥が入ってきた。足に手紙が括り付けていた。近くにいた巫女が手紙を取り外して宛名を確認した。そしてちょっと顔を顰めた。

封を開け、手紙をざっと読んだ。そして難しい顔をして


「これは、私たちの手におえないわ。ミヅキ様に判断を仰ぎましょう。誰か、連絡入れてちょうだい。」

と言ったのだった。彼女の手にある封筒には「死神協会 転生管理局本部」とあった。一つため息をして言葉を続ける。


「死神が関わってくるとなれば、矢面に立つには死神資格の無い私たちでは役不足。ミヅキ様には早急に戻っていただかなくては。こんなことになるなら、私も資格を取るべきだったわね。学業に専念するしたいからと巫女業を疎かにしすぎたかしら。」

なんて言うのを聞きながら、周りにいた他の巫女たちは思った。

「「「いやいや、人の身で死神資格とかホント無理だから、ミヅキ様たちが異常なだけだから、真似しちゃダメなパターン!」」」

とりあえず、今後の方針は上司(ミヅキ)の指示を仰ぐことが決まったところで巫女たちは各々の作業に戻った。いつの間にか手紙を届けた鳥はいなくなっていた。それでも巫女たちは気にするそぶりを見せなかった。当たり前のように思っている様子だった。


ミヅキと連絡が付いたのは、これより数日後、巫女たちに合流するのにさらに数日かかった。突然、部屋に姿を見せたミヅキは相変わらず、緑の服を着ているが、なにやらげっそりとしていた。心配そうな顔をする巫女たちをよそに微笑を浮かべながら口を開く。


「久しぶりだね。私が不在だった間、色々あったみたいだけど、改めて説明してくれるか?」

そうして簡単な報告会が始まった。



結果的に言えば、被害者は日本人だけでなく、世界中に存在していた。けれど、やはり日本人の被害が多いことに変わりなかった。なにしろ被害者数のケタが違う。


「これ、事件名変えないとダメだね。日本人以外もいるからさ。」

と言いながら、資料の表紙に目をやった。そこには「日本人召喚系拉致事件の被害報告」とある。「日本人」の部分を「地球人」に変えれば良い話なのでかなりどうでもいい発言だった。事件名がダサいのはみんな目をつむっている。

しばらく微妙な空気が流れたが、報告会は続けられた。そんな中に重要書類が入っていると思われる封筒が届けられた。

書類を読んでミヅキはため息をした。


「国際神霊連盟からの委任状だ。彼ら、こちらに丸投げしやがった。」

かなり苛立たしそうである。それを見ながら、巫女の一人が発言した。


「けれど、これで神々の方針はほぼ出揃ったのでは?」

それにミヅキはコクリと頷いた。


「美琴の言う通り。アッラーは沈黙を守り、ギリシャ神、ケルト神、北欧神、その他の神々もこちらに任せると言っていた。委任状は神々の総意でダメ押しってところかな?協会は連盟と別組織だから、意見が若干違うようだが、誤差の範囲だな。しかし、"異世界に囚われた魂をできうる限り、回収せよ。"とは協会も人づかいが荒い。」

美琴…先程、発言していた巫女がまた口を開いた。

「私が最初に受け取った手紙、協力要請書類が混じっていたのは気づいてましたけど、これはどう読んでも命令書類ですね。協会はなにを考えているのでしょう。こちらに命令できる立場にないくせに。」


「仕方ない、魂の回収に関してはここ数年手付かず、生者のみの救出だったわけだから、転生管理局の仕事に支障が出ていておかしくない。今は相当ピリピリしてるだろうさ。」


「委任状の追伸も気になります。"報復措置に関してできうる限り血を流さぬように。"とはどう言うことでしょう?」


「そのまんま、間違っても戦争にならないように釘さしたんだよ。」

とミヅキはカラカラ笑った。そして


「これで政府の公的機関を巻き込むのがさらに難しくなった。以前と変わらないけど。警察を誤魔化すのも大変なんだけどね~。さて、どうするか。」


過去に救出した被害者で警察の追及が厳しかった者が少なくない。異世界で過ごした年数が長いほど戻った時が大変になる傾向にあった。主に見た目年齢で。ミヅキの一族は身体の年齢を巻き戻す力はないのだ。



「しかし、まぁ、なんというか、ケタがおかしいよな。累計被害者数なんで日本人3桁通り越して4桁行きそうなんだ?しかも死因がロクでもないのばっかだ。黒髪か?黒髪のせいなのか?」

ミヅキはまた、ため息をした。今も怒り狂う土地神たちを思う。天照大神が宥めているから、表面上、物分かり良く上に従っているが、これ知ったら、彼ら絶対暴走する。報告書はかなりオブラートに書き直さないとまずい。ため息が止まらなかった。そして、わざと現実逃避することにした。さしあたっては


「我が一族の者が拉致された時の行動パターンが書かれた資料どこだっけ?」

資料を受け取り、それを少し読んでミヅキは面白おかしそうに笑ったのだった。


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