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第一次異世界大戦 裏話〜かの半神は暗躍す〜  作者: 一青アリア
その神、巻き込む
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彼女は救出作戦を決行する3

その日の彼女の運勢は、女難の相に男難の相が出ており、 用心をするのに越したことはなかった。ので、そうするつもりだった。



彼女が異世界にやってきてもう二週間近く。途中で部屋を変えることになったけど、王が来襲することもなく、とりあえずは手紙の主が指示した通りの生活を送れていた。いたのだが、ここにきてこの運勢とは、今日は世話しにやってくる侍女たちにも警戒しろということなんだろう。


ここにきて四日目を過ぎたころ、また手紙は届いたのだ。そこには、"救出まで一週間以上かかるかも、そしたらゴメンね。"とあった。救出に時間がかかるのは残念だったけど、まだ希望はあるのだと信じられた。

でも、二週間近くも自由されていれば、やっぱり不気味な感じがしてくるわけで今日あたり仕掛けてくるんじゃないかしらと気を引き締めたのだった。


……気を引き締めていても、薬の作用に勝てるわけもなく、意識が遠のいてしまい、気づいたら、天蓋付きベッドの上に寝かされていた。両腕は頭の上で縛られていて、王が彼女の体を跨ぐように座っていた。そこそこ体重をかけられて正直息が苦しい。

己の貞操の危機に直面した彼女だったが、自分の勘を信じて()()()()()()()足掻くだけ、足掻くことにしたのだった。さしあたっては、身を捩り、足をバタつかせるところから、それしかできそうにないけど。


「いや!離して!その汚い手で私に触らないで!誰か、誰か私を助けなさい!」

彼女の怒気を含んだ叫びがその場に響いたのだった。



現在地、被害者女性がいると思われる建物の入り口付近。

ミヅキたちはやっとここまでたどり着いた。着いたのだが、いかんせん、邪魔者が入り口付近に集中して配置されていて前に進めない。


「ちっ!うじゃうじゃと邪魔なヤツらだ!」

と言ったのは、真木二尉で


「……もう、壊していい?いいよね?建物壊しても。ヤツら一緒に吹き飛ばしてやんよ。」

とミヅキが他の救出要員たちの返事を待たずに刀を構え直して一気に横薙ぎに振ったのだった。


ドッゴォーン!!

騎士たちを巻き込んだまま、その斬撃は建物に大穴を開けた。道もできたので一同は何にもツッコむことなく奥に進み、階段を駆け上がっていった。

ミヅキが刀を振る前に「吹っ飛べ!」と言った気がしたが、周りの音がうるさくてよくわからなかった。


「被害者女性はこの建物の最上階にいる!このまま進むぞ!」

と言ったミヅキにそういえば、と辻井三尉が質問した。


「今までの救出で被害者に対して記憶の改竄などを行なったと聞いてたんですが、今回はするんですか?」


「いや、できないな。だから、警察を巻き込んだというのもある。清宮の本家は安倍晴明が始祖だ。人間じゃないモノの血が流れてる。そのせいか、私たちの力がうまく作用しないんだ。よって、彼女にはなんだかよく分からないけど、警察の人に助けてもらったというふうに認識してもらう。帰ったら、一課には色々と誤魔化してもらわないとな。」

と言いつつ、先頭を走るミヅキだった。また、邪魔者が増えていた。


「ここ、後宮なんですよね?なんでこんなに男がウヨウヨいるんです!?」

と、神崎三尉が言い、


「王がここにいるからじゃないのか!?」

と真木二尉が言った。


「それもあるが、彼女が正妃候補筆頭で、私が邪魔しに来ると思ったからだろうよ。」

とミヅキが付け足した。


そして、また

ドッゴォーン、という轟音の後に壁に大穴を開けた、ミヅキだった。


そして、最上階にたどり着くと、そこには今まで見てきた騎士たちの中でもなんだかとても強そうな気配を漂わす者がいた。


「……あの手の人間は、銃弾を剣で切り刻む可能性が高い。私が相手するから、お前たち全員援護に回るように。」


その場に凄まじい殺気が溢れかえったのだった。


ガィン、ガガガ、ガキィンッ

その場で闘うのは、ミヅキとなんだか強そうな騎士一人。他は睨み合いの状態だ。


「音からして、あの人、相当デキますね。一佐も、鍔迫り合いをできるだけ避けているのにアレですか。銃で援護しようにも、二人とも動きが早くて一佐に当たっちゃうかもと思うと、躊躇ってしまいます。」

シュンとして言う神崎三尉。


「おっ!一佐が二本目を抜いた。戦況動くぞ。みんないつでも動けるようにしておけ!」

と真木二尉が言った。


現在、ミヅキは二本の刀を持って相手と対峙していた。彼女が持っていたのは仕込み刀という二本の刀を一本の刀に見せかける加工がされたものだった。


キンッカッキンッガキィンッ

見た感じ、剣舞のように美しいが、目が良い者でないと動きに追いつけないくらい、彼らのスピードは異常に早い。


「ふっ、まさか、私の刀と同類の剣の使い手がいると思わなかった。なかなかに興味深いが、お前の相手をずっとしているわけにはいかないからな。ここで倒させてもらうぞ!」

と、ミヅキは言い、相手の剣をへし折りにかかった。


ガキィィン!!

スパーンッスパーンッ

その音で決着がついたのだと彼女の部下たちは気がついた。


彼女が相手をしていた騎士の剣は根もとから砕けて、彼の足元には血が滲んでいた。

一応、手加減はしたが、警備に戻られても困るから、ひとまずアキレス腱を切って無力化したらしい。あっ、よく見たら、腕にも傷がある。彼らの上官は相変わらず、抜かりがなかった。


そこまで確認して、周りの騎士たちが戦意喪失したことに気づいた。ならば、このまま通してもらおうと一同は走り出した。



「斎藤警部補、あともう少しです!頑張って走ってください!」

と結城一尉が励ました。とは言っても、折り返し地点にすら到達できていないのだが、誰もツッコまなかった。


で、やっぱり見届け人が最初に被害者女性の無事を確認するという指示もあったから、ミヅキが彼の腕を掴んでグイグイ引っ張りながら走り、目的の部屋までたどり着いた。


ドンドンドンッガチャガチャガチャッ

やっぱり、部屋には鍵がかかっていた。

なので、ミヅキは再び、刀を振るい、目の前の扉をぶった切ったのだった。


スパーンッスパンッスパーンッ

ドダダダダダッ


「清宮環奈さん、警察です!助けに来ました!……っっっ!」

とできるだけカッコよく言って見た斎藤警部補だったが、被害者女性の姿に動揺して顔を赤くし、後ろを向いた。


「ピャッ」


ミヅキに強く肩を叩かれ、変な悲鳴を上げてしまった、斎藤警部補、哀れだと思ったミヅキ以外の救出要員たちだった。


「私が出てくるまで、部屋には誰も入らないように。」

と指示を出してミヅキはズカズカと天蓋付きベッドに近づき、


ドゴッ!!

文字通り、王をベッドから、蹴落としたのだった。


『オイ、コラ、我が国の邦人に対し、よくもまあ、こんな無体ができたなぁ。覚悟はできてんだろうなぁ!アアッ!』(ドイツ語)

何やら、何かを蹴る音と硬い何かで殴る音が響いた。


「あー、本条さん、自重してください。そしてさっさと被害者女性を保護しろよ。こっちはまだ近づけないんだから。」

と、真木二尉が言った。


コツコツ

と彼らに近づく音がして、


「あー、すまんが、誰かジャケット借してくれ。彼女の格好が酷すぎてこのままじゃ外に出られない。それから、この近くで倒れているであろう、侍女たちを安全な体勢にしておいてくれ。私の殺気にほとんどやられてしまっただろうから。」


で、結局、元々被害者女性を担いで運ぶ係だった鹿野一尉から、ジャケットを借りた。

鹿野一尉も最初からいたよ。ここまで出番なかったけど。


そんな彼はもし空自にいたら、救難員メディックにスカウトされていたかもしれないほど体格がいい。だから、救出要員にされたのだけど。ジャケットも結構大きいから、被害者女性もすっぽり覆えたようだ。


さてさて、ミヅキが被害者女性を連れて出てきた。ほおが腫れているし、目元が泣いた後のように赤くなっているが、思ってたほどダメージが少なかったようで元気なようだ。

あとで聞いたら、服は破かれるし、殴られたけど、結局のところ性的暴行を受けずに済んだのだという。まぁ、それでも、


『救出が遅れて、大変申し訳ありませんでした。家族の元に帰りましょう?』

と言うのが、救出に来た者たちの礼儀だと思う。


「本当にもうダメかと思いました。でも、助けに来ていただけて嬉しかったです。」

被害者女性…清宮環奈は言ったのだった。


タタタタッ

来た道を戻るように一同はひたすら走っていた。その中で担がれているのが二人ほど。

非力で被害者女性な清宮さんは仕方ないにしても、他に担がれているのは誰?

って思うかもしれないが、斎藤警部補が限界だった。


「……最短三キロって言ってたのに、全然三キロじゃない。もう、一歩も走れません!」

と言って彼は膝から崩れそうになったところを結城一尉に肩を借りてなんとか踏ん張って立っているという状態になった。

そこでミヅキが


「三キロって片道のことだろ。これぐらい走れないとダメだろ。……ん、まさか、往復三キロだと思われていたのか?あぁ、納得。言い方悪かったんだな。ゴメン。」

と言ったのだった。


で、そんなこんなで走っていたが、どうやら増援が来てしまったらしい。そういえば、軍関連区画から、後宮区画までは妨害するのを忘れていたような。


「チッ!仕方ないなぁ!私が先行してつゆ払いする。お前たち、近接戦闘になるなよ。」

とミヅキは言ってその場から少し離れたのだった。


「……辻井、お前サブマシンガンにヒビ入ってたな、絶対使うなよ。いぬいに借りろ。それから、拳銃の弾倉マガジンの予備はあるか?なくなったら、ちゃんと言うだぞ。」

と真木二尉が言った。


「了解です!弾倉マガジンの予備はあります。大丈夫です。」

と元気よく応えた辻井三尉だった。


ちなみに真木二尉が言ったいぬいというのは鹿野一尉が疲れたら、代わりに清宮さんを担ぐことになっていたいぬい二尉のことである。

今更ながら、救出要員がみんな尉官というちょっと階級の高い人たちなのは、防衛大を卒業しているからというきちんとした理由がある。

それはともかく、彼らは彼らで敵に近づかれないように気をつけながら、移動を続けた。


ドゴーン、ドゴーン

と戦車が砲撃するような音が響いているが、犯人はミヅキだ。

救出要員たちはこうやって門を攻撃したんだな、と納得したのだった。

やっぱり刀を横薙ぎに振っているようにしか見えなかったけど、清宮さんにはそうは見えなかったらしい。


「あれは、刀に気を纏わせているんですよ。気功ってあるでしょう?彼の場合、それを圧縮して周りに放つから、あんな威力になるんだわ。でも、あそこまで強いの初めて見たわ。彼は規格外なのね!」

と言うのを聞いて、救出要員たちはそうですか、と言うのに留めた。清宮さんのミヅキの性別の勘違いは正さないことにした。


周りがある程度、戦意消失してくれたので走るスピードを上げ、西門へと急ぐ。

途中から、体力が少し回復した斎藤警部補も一緒に走り出した。やっぱり、男としても、大の大人としてもおんぶは精神的にキツかったらしかった。


西門まであと少しというところで、ミヅキ以外の救出要員たちが持っていた銃の弾丸が尽きた。そこでミヅキが威圧し、威嚇して睨み合いの状態に持って行きながら、なんとか転移無効の術式を抵抗レジストできる地点まで移動した。そして真っ先に清宮さんを鹿野一尉ごと王城から一キロ離れた脇道に転移させた。


そこからはものすごい勢いで、部下たちを次々に転移させ、自分だけ残ると、一拍手。

王城の結界の設定が元に戻り始めた。全部元に戻りきる前に彼女も部下の元に転移したのだった。


ミヅキが戻ると、一様に安堵の表情を見せた部下たちにくすぐったい気持ちになりながら、

「さて、帰るか!」

と言って神具の発動をしたミヅキだった。


で、かくかくしかじか、清宮さんに界を渡る時の注意事項を説明する。


「多分、元の世界に待機している警官が、清宮さんの手を取って引っ張り上げてくれると思うんです。できれば拒絶しないであげてくださいね。」

と言い、清宮さんの手を握り、穴の中へと促した。



現在時刻、26:00。場所は都内某所。

待機中の警官たちはミヅキたちの帰りを今か、今かと待っていた。

その近くには、ミヅキが親戚の子と言っていた女の子数人とどこから聞きつけたのか分からないが、ミヅキたちにとっては招かざる客もいた。

女の子たち曰く、今回は時間がかかっているらしい。



そして、しばらくすると、ぽっかりと穴が開いた。


穴から女性の手が見えたので、すかさずなぜか慧がその手を取って引っ張り上げた。


「良かった。無事に帰ってこられたようで安心しました。」

と慧は言ったのだった。


そこから、ポンポン男たちが出てきた。

ただ一人を除き、あまり疲れた様子は見せていないが、やっぱり慣れない戦闘で気を張っていたらしい。


最後にミヅキが穴から出てきた。


「あー、やっと戻ってきた。ただ今。美琴たち!」

部下や待機組の警官を無視してそんなことを言ったのだった。


で、他に誰かがいるのに気づいて


「げっ!」

と言い、ゲンナリした表情になったのだった。

そこには、清宮さんのご両親を含めた現役の陰陽師たちが数人いた。


色々と根掘り葉掘り聞かれそうな予感がビシバシして、早く帰りたいミヅキはガクッと肩を落としたのだった。

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