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第一次異世界大戦 裏話〜かの半神は暗躍す〜  作者: 一青アリア
その神、巻き込む
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彼女は救出作戦を決行する2

「十時の方向より、敵兵四、三秒後、二時の方向より、投擲が来ます。皆さん回避してください!」


『了解!』


「……はい。」


周りはモクモクと煙幕が張ったような感じになっているが、敵はすぐ近くまで来ていたようだ。とりあえず、戦闘になるのを極力避けつつ走る一同だった。





作戦決行の約三十分前


前回、ミヅキが最初に訪れた王城より一キロほど離れた脇道に彼らはいた。


「警察が押収した武器を使うって言うから、てっきりトカレフか54式拳銃(中国製トカレフ)を渡されるかと思ってたんですが、マカロフでしたね。しかも、ロシア本国製の。意外です。まぁ、暴発しやすい拳銃の代名詞である54式拳銃(中国製トカレフ)でなければなんでも良かったんですけどね。」


「あぁ、確かに任務中の銃の暴発とかマジ勘弁だな。」


ただ今の会話、救出要員の結城一尉と真木二尉によるものである。

ミヅキが陽動の門への攻撃準備のために席を外しているから、若干私語が多くなっているようだ。


「……正直、いつも使ってる拳銃(ヤツ)よりちょっと軽いから、手元狂わないか心配です。試射できなかったのが残念です。」

と言ったのがこの場で最年少の辻井三尉。


「うっさい、サバゲーマニア。それのモデルガンは持っているんだから、触り慣れてるだろ。」

心底、うざったそうに真木二尉が言うと


「実物とモデルガンでは材質も重さも違うんですよ。先輩!」

辻井三尉はそう返した。


「……北の大国から流れてくる銃の数が年々増加しているとは聞いていましたけど、予想以上ですね。警察の目が節穴なのか、それとも、ヤのつく職業の方々やマフィアの方々の密輸がそれを上回るのか、どちらなんでしょうね、斎藤警部補?」

そう言う結城一尉の目は笑ってない。

見届け人な斎藤警部補は顔色を悪くしながら、こう言った。


「……密輸ルートが多すぎて潰しても、潰してもウジ虫のごとく湧いてくるんです。中国からの密輸ルートは数年前にほぼ壊滅状態になってからはとても大人しいんですが……。」

ちょっと涙目な斎藤警部補をよそに救出要員の一部の者たちは"中国・密輸ルート・壊滅"という言葉に反応し、遠い目をした。

要はすっごく心あたりがあったのである。


なんてことはない。ただ言われたのだ。他ならぬミヅキに。合コンがある度に

「いいか。街中でいかにも"カタギじゃありません"な人を見かけたら、それとなくおまわりさんに言うんだぞ。」と。

その頃にはミヅキの特異体質が移ったのかなんなのかわからないが、一般市民に擬態する"カタギじゃない人"までもなんとなくわかるようになっていたから、合コンのついでにおまわりさんにチクるようになった。

その結果が"中国の密輸ルート壊滅"だったらしい。結構、大事になっていたものだ。


でも、今度は北の大国か。ちょっと警察が可愛そうな気がするから、合コンの回数増やして街を歩く機会増やすか。


なんて考えてる救出要員なお兄さん方だって一般市民に擬態する力は相当である。

自分たちと同じようになんか擬態してる人がいるな、と思ってよくよく見たら"カタギじゃなさそうな人"だった、なパターンが多いのだから、ある意味同族探ししているようなものだったりするのだ。


そんなこんなで、作戦決行時刻まであと僅かになってやっとミヅキが戻り、最後の確認をする。

作戦開始の合図は門の破壊音と結界の干渉終了。結界に着色してわかりやすくしてくれるそう。終わったら、ミヅキはここまで転移し、救出要員たちを連れて西門近くに転移、侵入の流れになる。そこからは、現場の判断で動くしかない。できるだけ、戦闘を避けて行くことになるが、戦闘になった場合には手加減し、相手が死亡するようなことはないようにと指示されたのだった。

それって結構難しいんだけどね。上官にそう言われたら、そうするしかないね、と諦め半分な空気が流れたのだった。


そして、ミヅキがまた消えて数分後、遠くに轟音が響き、王城付近より煙を確認した。

さらに数分後、また王城付近より幕のようなものが広がっていくのが見えたと思ったら、ミヅキがもう戻ってきた。

その場にいた面々はどうやって門を攻撃したのか聞きたかったけど、そんな空気じゃないし、早々に転移しなきゃならなかったから、聞くのを諦め、ミヅキに直接、または間接的に触れて一緒に転移したのだった。


で、転移した場所は西門近くは近くだけどどう見たって門の内側、王城の敷地内だった。

大事なことだからもう一度、王城の敷地内だ。とは言え、門より、十メートルくらい内側なだけだけど。


「……王城敷地内だと転移できないって言ったのは一佐です。これはどういうことですか?」


「結界に干渉していたら、転移無効の術式も見つけて、そっちにも干渉してみた。で、ほとんど意味なかったけど、西門近くだけ抵抗レジストできるくらいには術式を弱めることができたから、こうして転移したわけ。それにあの瓦礫の山を斎藤警部補に歩かせるのは無理があると判断した。」

ミヅキが指差す方向には確かに瓦礫の山がある。多分、門だったモノだ。あの上を歩くのは自衛官な救出要員たちはともかく斎藤警部補には厳しそうだった。

一応納得した面々だが、やはり上官のチートぶりには若干引いたのだった。


「ほら、そろそろ行かないと人が来るというか、もう近くに来てるヤツらは来てるぞ。走れ!」

と言われれば走るしかなく、一同は一斉に走り出した。


走っている間に結界の干渉と同時進行で行なっていたという王城の警備に対する妨害工作のいくつかについて説明された。


ミヅキが行ったのは、結界の設定の変更なんだそう。「部外者侵入禁止」から「魔力保持者出入り不可」にしたんだそう。これで王城敷地内から魔力保持者が出られなくなったんだとか。その上で敷地内にある建物、一つ一つにそれと効果の同じ結界をかけて建物からの人の出入りを制限したという。

ちなみにこの世界の人間のほとんどが大なり小なり魔力を持っているため、これだけで随分と警備の妨害になるんだと。

建物の外にいる警備の妨害はこれから走りながら、区画ごとに結界というか障壁?みたいなものを設置してこちらにできるだけ近づけないようにするそうな。


追っ手を撒きながら、走ること二十分くらい。一同の目の前には森がある。

なんで森!?って思ったが、ミヅキの解説で納得した。要は魔術関連区画と後宮の建物群を完全に隔てるためのものだという。


魔術師が森にあれこれ手を加えていて足場の悪いことこの上ない。

あっ!足の速さで選出された斎藤警部補がバテ始めた。

結局、後宮の建物群が近くに見える場所でしばし休憩した。

建物の周りには後宮なはずなのに男性である兵士がウヨウヨと歩いている。ミヅキ曰く、ほとんど近衛騎士だそうだ。

そしてやっぱり剣を帯刀していた。


「……やっぱり、防刃ベストかなんかも借りた方が良かったですかね?」

と結城一尉が言うと


「……無い物ねだりしても仕方ないだろ。それにあれはスーツのジャケットの上に着るにはちょっとな。」

と明後日の方向を見ながら、ミヅキは答えた。その様子にあー、ウッカリ忘れてたんだなぁと周りは思った。


防刃ベスト…街中を巡回するとおまわりさんたちが身につけている紺色か黒色をしているチョッキのようなもの。ぶっちゃけ、防弾チョッキと見間違う一般市民は多いけど、おまわりさんはいつも防刃ベストを着て巡回している。だって、刃物沙汰は割りかし多いんだもの。


「んー、剣を振り回される前に無力化するしかないですかね?でも、弾の温存もしておきたいですし、迷いますね。」

と辻井三尉が言い、


「剣道やってるんだから、急所避けるくらいはできるだろう。それでも、ここからは被害者女性の元に最短距離で突っ切って行った方がいいんでしょうね。一佐、被害者女性はこの建物群のどこにいるか分かりますか?」

と、真木二尉が若干投げやり気味に言った。


「あー、建物群の中で最北・最東端の建物っぽい。最短距離って言っても結構走らないとだな。こちらに認識阻害の術かけるから、それなりにバレずに行けるはず。」


「認識阻害?なんで最初からかけておかなかったんです?」


「いやー、忘れてた。ゴメン。それと音は認識できるから、発砲は本当に危なくなった時にするように。」


なんか、難易度がググッと上がった気がした面々だった。


で、建物群をところどころ迂回しながら走って後宮の建物群(もう、後宮区画と呼ぼう)を半分ほど横断した時、とうとうバレて発砲せざるえない状況になってしまった。まぁ、ここまで発砲せずにいれたのは結構運が良かったのかもしれないが。


「分かっていると思うが、敵の膝関節狙えよ!剣を振り回されたら、腕の関節だ!できるだけ近接戦闘にならないよう、十分注意しろ。」


「できるだけ、お互いの距離が離れないようにお願いします!特に斎藤警部補、あなたはこういうの慣れてないんですから、俺か、真木の近くから離れないで!他は一佐のフォローお願いします!暴走の予兆が見えたら、報告するように!」

指示を出しているのは、真木二尉や結城一尉だ。ミヅキは刀を振り回し、黙々と騎士たちを無力化している。


返り血すら浴びていない様子にちょっと引いた面々。そして、どんどん表情が抜け落ちていく様子に焦ったのだった。


ガィン!


「っと!これヤバい感じ?」

最初に近接戦闘に持って行かれたのは救出要員の中で一番経験の浅い辻井三尉。彼は持っていたサブマシンガンで剣を受け止めたのだが、銃身にヒビが入ってしまっていた。


「辻井!」

近くで結城一尉の声がしたが、それに応える余裕が今の辻井三尉にはなかった。


バババババッ!

連続した銃声の後に辻井三尉が応戦していた相手が後ろに倒れた。ついでとばかりに他の騎士たちも幾人か倒れていた。どうやら、両膝の関節を撃ち抜かれたらしい。

撃ったのは、ミヅキのようだ。相変わらず、早撃ちが上手だとちょっとズレたことを考えてしまった辻井三尉だった。


持っていた刀をどこへやってしまったのか、ミヅキの両手には拳銃が握られている。そして彼女の目は完全に据わってる状態だ。


『私の部下に手を出すとはいい度胸だ!』(英語)


バババババッ

半分キレているミヅキが道を開いたから、それに遅れまいとみんな足を速めた。

しかし、さっきからミヅキの殺気がハンパない。慣れている救出要員たちはともかく斎藤警部補が気を失いそうになって、近くを走る結城一尉に腕を抓られてやっと意識を保っている状態だ。

そのかわり、近くまで来ていた騎士たちが殺気にやられてバッタ、バッタと倒れてくれているのだが。

走りながら、ミヅキは刀で建物の壁を破壊し、障害物を作り、騎士たちが近寄るのを妨害した。(正直、刀を横薙ぎに振ったり、一閃させたりしているようにしか見えなかった)壁が崩れたせいか、視界が悪くなった。


モクモクモク、

索敵能力が高いミヅキはともかく他の救出要員には視界がきかない状況はあまりよろしくないように思われたが、


「神崎、ここからは、お前がナビゲートしろ。私はこのまま瓦礫を量産して騎士たちの妨害をする。と言ってもそんなに離れたりしないから、大丈夫だ。」

実は最初からいた神崎三尉。この中でミヅキの次に索敵能力が高く、敵の気配、飛んで来るものの気配をよく感じ取れる人だった。


「了解です!」

元気良く応えた神崎三尉だった。


パンッパンッ

先程よりずっと少ない銃声が響く。

ミヅキが先行しているため、騎士たちはそっちに向かい、こちらに来る者はずっと少なくなった。


「あー、やっぱり銃声って響きますね。サイレンサー(消音器)くらい持って来れば良かったですかね?」

と辻井三尉が言うと


「今更だな。別になくても、どうも騎士たちは何の音なのか、分かってないようだから、いいんじゃないか?」

と、真木二尉が答えた。


その後ろで斎藤警部補がだいぶ上がった息をしながら、走り、その周りを囲むように結城一尉たちが走っていた。


「四時の方向より、誰か来ます!」

と神崎三尉が言うと周りに緊張が走ったが、すぐに誰か分かったようで銃の構えを解いた。


「……王の気配を感じた。結界の干渉の時、彼は行政区画にいたから、油断した。アレは私の結界の影響を受けない。急ぐぞ!」

いきなり戻ってきたミヅキが早口でそう言った。

「被害者女性がいる建物はもう見えている。が、王の方が早かったらしい。何か無体なマネしなければいいのだが。……いや、アレならば絶対する。アレはそういう血筋だ。とにかく、ギリギリでもなんでもいいから、間に合え!」

一同は、走る速度をさらに上げた。

そんな中、かなり息の上がっていた斎藤警部補は最短三キロ?これ絶対もっと距離あるよね。もう体力もたないかも?と悲観的なっていた。


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