その事件は突然に…3
安倍家…陰陽師の大家として有名な家。その歴史は古く、少なく見積もっても千年以上は続いているとされている。なので、分家もたくさんあり、清宮家はその一つ。ちなみに安倍家のライバルは蘆屋家。もうずっと昔からライバルしてるらしい。
そんな情報を頭の中で反芻した面々。
「それ、ヤバくないですか?」
と、慧が言う。
「ヤバいもヤバい。このままだと確実に接触しちゃうから。清宮は安倍の血が濃い方だから、バレる可能性が高い。口止めしようにもあちらさんの財力と権力も相当だから……。なぁ、助けに行くのヤメたいんだけど。」
とミヅキが言った。
「それは、ダメぇ!!」
とあやめが言い、
「それだけは、おやめください。ミヅキ様。」
と薔薇が言った。
「それでは、被害者の女性も婚約者の方も不憫過ぎます。私も、あやめや薔薇と同じ考えです。」
と美琴までもがミヅキの意見を却下した。
「しかしな、実際問題、事件発生から一週間も経ってるんだ。あっちの時間経過速度はこっちの三倍速。あっちじゃ、もう一ヶ月近く経ってるんだぞ。あの王家の男子は総じて手が早い。普通に考えたら、もう手遅れだと思うけどな。
それに今の捜査一課にだって安倍家の手の者がいたはず。本当にやりにくくてかなわない。」
状況の悪さに皆が口を噤む。
「……安倍姓を持つのは本家と分家の一つのみだったはず。捜査一課にいる安倍は、どちらの家の安倍だ?」
とミヅキが慧に尋ねた。
「……確か、本家の方と記憶しております。」
最悪だ、とその場にいた全員が思った。
「で、どうするのが正解だ、これ?話し合いで話を詰めるにしても時間が足らない。あっちは着々と結婚式の準備でもしてるだろうよ。でも、結婚式の場で連れ戻す手もあるのか?あっちじゃ、婚約期間が一年間設けられるから。王族も例外じゃなし、こっちで四ヶ月で準備して作戦決行ならイケるか?
被害者の貞操の無事まで保障できないが。…ん?」
コツ、コツと窓の方から音がした。そこには世界のどこにも生息していないと一目で分かるほど派手派手しい色合いをした鳥が一羽。その足には、紙が括り付けてあった。ミヅキはその鳥が誰の鳥なのか知っているらしい。
鳥から、紙を取り外すとさっと目を通した。
「……"狭間の番人"の方から、連絡とは珍しいこともあったものだと思っていたが…。…朗報だ。あっちの時間経過速度をこっちの三分の一になるよう干渉してくれているそうだ。これで少しは色々、動く時間が稼げた。」
「「「「"狭間の番人"?」」」」
「界と界の接触事故を防ぐために自然発生する神々の総称だ。私は、かの神々の幾人かと面識がある。まさか、協力してくれるとは思わなかったが。都合がいいな。」
「一条警視、この事件、警察の方ではこれ以上の進展を見せる確率は低く、重要案件でないことから、おそらくあと二週間ほどで捜査打ち切りまではいかなくとも、捜査規模の縮小は免れないということで間違いないか?」
「そうですね。あちらも色んな事件捜査してるわけですから、解決の見込みもないのにちんたら捜査を続けるという選択肢はないんじゃないですかね。」
「とりあえず、このまま捜査を続けてもらおうと思う。圧力かけてでも。それで不満タラタラになってもらってこっちに付け入る隙ができたら御の字だ。後は、安倍氏が事件担当でないことを祈るか。どう連れ戻すかはその後で考えよう。捜査一課の面々には迷惑をかけるが、仕方ない。」
そんな会話をしてから、一ヶ月と少し経った後、慧は、警視庁 捜査一課に突撃訪問をかましたのだった。




