その事件は突然に…1
それは本当に突然だった。一族の誰一人として予知できなかったのだから、他の誰も予知できない不測の事態だった。
事件発覚から三年半になろうという頃、都内のとあるパーティー会場で少女から大人の女性に変わろうという微妙な年頃の女性が突然消えた。
現場はパーティー会場の壇上だったらしい。彼女が挨拶を終えてお辞儀をしてすぐ、足元に魔方陣のようなモノが浮かび上がり、それが消えると彼女も一緒にいなくなっていたというのがことの顛末らしい。
らしい、らしいというのは、人から聞いたからだ。ミヅキたちがその話を聞けたのは事件発生から一週間と少ししてから。
壇上から消えたものだから、目撃者多数で結構な騒ぎになったようだ。それでもニュースで報じられた時は、普通の誘拐事件として取り上げられていたから、金にモノを言わせたことが伺える。まぁ、賢明な判断だと思う。こんなの世間にバレたらと思うとちょっと怖い。パニックが起きそうな気がする。
でも、警察に八つ当たりするのはどうかと思う。彼らはこの手に関しては門外漢だ。
なんてことを知っているのは、警察に知り合いがかなりいるから、だったりする。
彼女の家族も彼女の婚約者も相当な嘆きようだったらしい…。
さて、私たちはどう動こうか。なんだか、今までのように動けない気がする。
その場の空気は、とても重く感じられた。
原因は、とある誘拐事件で進展がみられず、もう少し捜査を続けたら、規模の縮小を考えようかというふうに話を進めようとしたことらしい。
とにかく、上から圧力がかかり、縮小の話はなくなった。これ以上、捜査のしようがないのにだ。
捜査関係者は困惑するしかなかった。何度、防犯カメラの映像を確認しても、被害者の女性は突然消えたようにしか見えなかったのだから。一応、映像に手が加えられていないかも調べたのだ。複数の専門家に依頼して調べても結果は一緒で、映像をいじった人間はいないということしか分からなかった。
被害者の交友関係もきちんと調べた。結果は何にも出てこなかった。パーティー会場のセキュリティにも不備はなく、怪しい人間はその場にいなかったことしか分からなかった。
もう、お手上げ状態だと誰もが思ったのだ。
それでも、上からの圧力は止まず、被害者家族からは詰られる。もう、胃が痛くてしょうがないし、他の事件の捜査もしたいしで、関係者の不満は募るばかりであった。
そんな中、一人の男が捜査一課を訪ねてきた。
男の名前は、一条慧という。所属は警視庁 警備部 警備企画係。階級は警視。まったくもって畑違いである。というか、お前何しに来たんだ?こっちは暇じゃないんだぞ!とその場にいた面々の目が言っていた。
そんな刺々しい視線の中でも、一条警視は飄々とした態度を崩さず、一言
「えーと、その誘拐事件を解決できる人間がいるって言ったら、信じてくれますかね?」
と言い、場をさらなる混乱の渦に巻き込んだ。




