六条薔薇の場合
少女は待つのが仕事だ。待って、彼女らが帰還してから、彼女は本領を発揮する。
現在、待機中の六条薔薇です。
美琴様が被害者を連れて帰還されるのを今か今かと待っているところです。彼女たちが帰還したら、私の出番です。
私の得意とするのは、封印術なのですが、一族の中でも特殊な能力である記憶改竄の力があるために事件の収拾に協力しているのが今の現状です。
記憶改竄と言っても、最初に行うのは記憶の封印です。人の記憶というのは厄介なもので完全に消すことはできないのです。なので一族に伝わる封印術を応用して不都合な記憶に蓋をしてしまいます。
その後で記憶改竄を行い、誰かに姿を消していた間とこちらの世界に戻ってすぐの事を聞かれても答えられないようにするのです。私たちのことがバレでもしたら色々と危険ですから、必要な処置です。
それに、被害者の一部にはトラウマを抱えてしまった人もいます。社会生活に戻る上でそれは不都合ですから、そういうのは積極的に封印していきます。
さて、封印術についてもう少し詳しく説明していきます。他は知りませんが、一族の封印術を使う時に一緒に封印を解くための"鍵"というものを作ります。なぜなら、封印術が強力すぎて無理矢理では誰も解くことができないからです。永久に封印するならまだしも、一時的な封印をする場合では、これは不利になります。なので、かなり昔に鍵なしでの封印は禁止になりました。まぁ、他にも色々理由があったようですが、大きい理由はこれでした。
鍵の形は、巫女に任されていて、物理的に触れる普通の鍵にする人もいれば、言葉だったり、何かの光景だったりします。ちなみに私は物理的に触れる普通の鍵にすることが多いです。
もう少しで美琴様が帰還されるようです。実際にやってみようと思います。
今、私の目の前には、美琴様が連れ帰った少年がいます。頭に触らせてもらって記憶を少し覗かせてもらいます。実はその作業も意外とキツいものがあります。記憶って割と情報量が多いので、余計な記憶まで見ちゃうとこちらの体調に響いてしまいます。
あぁ、この少年はあちらの時間にして一日も経たないうちに帰ってこれたようですね。良かったです。酷いこともされなかったようで安心です。へぇ、勇者として呼ばれたのですか。多いですね、勇者召喚。日本人である必要ありますかね。
もう、さっさと記憶を封印してしまいましょう。えーと、期間は、こちらから連れて行かれてから、帰還して私が記憶の封印をし始めるまでで大丈夫でしょう。改竄は、どうしましょう。彼がこちらにいなかったのは一時間ほど。やっぱり、一時間の間でも記憶がないのは不安かもしれませんね。ということで、近くを散歩していたというふうに記憶改竄しました。これで誰に質問されても大丈夫でしょう。
ちなみに記憶改竄してる間、少年には眠っていてもらってます。力を使うところは見ていてほしくないので。
でも、どうしましょう。起きたら絶対に不思議に思いますよね。
散歩…散歩…っそうだ!近くに公園がありました。運が良かったです。みんなにも手伝ってもらって少年を移動させましょう。
移動しながら、さらに記憶改竄します。散歩して、疲れてベンチに座っていたら眠ってしまった、そんなふうに。
公園にも誰もいません。良かったです。
毎回、誰かに発見してもらえるように誘導したりするのですが、今回は必要なさそうです。ほら、少年の瞼が震え始めてます。
急いで撤退しましょう。
みんな、今回もお疲れ様でした。
それは、事件の収拾に動き出して丸二年が過ぎた、ある日の出来事。




