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第一次異世界大戦 裏話〜かの半神は暗躍す〜  作者: 一青アリア
巫女たちの奮闘
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九条美琴の場合

「ふふっ。せいぜい這い蹲って罪を償えばよろしいのですわぁ。」

そう言う彼女の前に立っている者は誰一人としていなかった。


時系列は、ミヅキが一ノ瀬一尉に人事交流の話をした頃まで遡る。


九条美琴は、学校帰りに寄り道をしていた。そこには人気がなく、とても静かだ。そして、とある神社の鳥居の前で立ち止まる。地面をよく見て、彼女は恐ろしいまでの無表情になったのだった。


召喚されたその少女は、居なくなって数日してから、家族から捜索願が出され、召喚された場所の絞り込みはある程度警察の方でされていた。警察はただの誘拐だと思ったようだけど。

そんな情報を横流ししてくれたのは、警察官をしている兄だった。


ふふふっ。神の前で召喚とは!どこまでも舐め腐っているのか。と思いながら、召喚術式を解析する。

それを終えると、

「私を彼の地へ!帝国歴957年火の月18日

フレンシア国 王都 発動!」

いざ!と神具を発動させ、かの召喚先へ出向いたのだった。

別に声を出さなくても神具は発動できることを教えてくれる人はこの場にいなかった。


術式からは時間までは分からなかったので、ちょっとドキドキしながら、その地にやって来た美琴だった。


過去の資料から、その国が召喚の常連でしかも、黒髪黒目が疎まれ、忌み嫌われていたことは分かっていたので自身に認識阻害の術をかける。


黒髪黒目がアウトなら、平行世界から召喚しなければいいのに、と思いながら周りを見る。

現在地は、フレンシア国 王都郊外の森の中である。周りに人はいない、好都合である。

森を出たら、王都の目印になるような建物を見つける。まず、これが最優先だ。


召喚してから、何日経過してるかわからないから移動時間はできるだけ転移で端折ることにする。セオリー通りなら、少女は王城か神殿にいるだろう。


さて、なんだか派手な建物が二つ見えてきた。どちらを先に行くべきかと悩んで、同郷の少女の気配を辿った先にある建物に行くことにした。幸いなことに美琴の視力はすごくいい。視界に入っているなら、転移する先の座標を間違えることはない。移動は一瞬で済むのだ。


で、やってきたのは王城?と思われる建物の尖塔の屋根部分。すっごく高い。美琴のテンションが上がった。

ちなみに認識阻害してるから、他の人には見えない。でも、声は聞こえるから、上がったテンションのままに叫べないことが残念だった。


さて、少女を探さないといけないので改めて気配を探る。

ずいぶんと下の方から、気配を感じたことになんだか嫌な予感がする。


素早く、建物の中に入ると美琴は勘で行く先を決めて走り出した。巫女の勘はよく当たる。地図がなくても、行きたいと願えば概ね、その場所にたどり着く。

何というチートクオリティ…。ツッコミ不在のまま美琴は走り続けた。


少々、騒ぎを起こしつつ、やってきたのは、いかにも地下に続いていますよ、なデカイ扉。頑丈そうだし、鍵がかかっている。

でも、美琴には関係なかったりする。


カチャリ

いつの間にやら、美琴の手には一本の刀が握られていた。実はこれ、美琴の制服のスカートのベルトにさしてあったものだ。今まで出番がなかったけど。

長さは脇差より少し長いくらい。女性の細腕で扱えるギリギリの長さだと思われた。


静かに居合いの構えをとると一気に扉を切断したのだった。

刃こぼれするとか、普通斬れないとか言わないでほしい。美琴も普通じゃないけど、刀だって普通じゃない。曰く付きの魔剣・妖刀の類いの刀だった。

派手に音を出してしまったので、人が来る前に結界を張り巡らし、退路を確保する。これ基本というやつだ。


それを終えると地下に降りた。

地下には、見張りと思われる人が幾人かいたけど、斬り捨てるまでもなく、威圧して動けなくした。ミヅキ仕込みの威圧は、生粋の軍人でも、相手は顔色をなくし、ガタガタ震えるほど恐怖させるものだった。


その少女は案の定、牢の中にいた。怪我だらけで目が虚ろだ。

でも、美琴を見ると涙を流し始めたのだった。牢の鉄骨をぶった斬り、少女に近づいて話を聞きながら、術で大きな怪我を塞いでいく。不幸中の幸いと言っていいのか、殴られただけで強姦のようなことはされなかったようだ。

だけど、憔悴しきっている。この世界で召喚されて一週間ほど時間が経っているのだが、その間、食事をほとんどとらなかったそう。納得である。さらには、自力での歩行が難しいらしい。

さて、どうしよう、と考えを巡らせる。美琴もさすがに同世代の少女を抱えて歩くのは難しい。そういうことでなくて、ここから神具で界渡りできるけど、帰る前に国の責任者…国王陛下とは一度()()()しないといけないのだ。どのみち、ここから帰る選択肢はない。そういえば、私、式神使えるんだったと遅まきながら、思い出したので、さっそく制服のポケットから一枚の紙を引っ張り出して術を使う。するとガタイのいい女性が一人立っている。言わずもがな、式神だ。

男の形にもできるけど、今の少女には酷に思えた。

ふと見ると少女が目をキラキラさせてこちらを見てた。

「陰陽師なんですか?」

と聞かれたので、曖昧な笑みを浮かべて

「そんなところよ。」

と答えた。ちなみに美琴は陰陽師と会ったことすらない。徹底的に避けてきたから。万が一でも普通の人間でないことがバレる可能性は潰しておきたかったのだ。


式神に少女を抱えてもらい、その上に認識阻害の術をかける。そして自分にかけてあった術を解く。そうしてから、外に向かったのだった。

頑丈な扉だったモノの前まで来るとそれなり離れているが、兵士と思われる有象無象がいた。

美琴はそれを無視して先を行く。目的地は国王のいる場所。セオリー通りなら、謁見の間にいるんじゃなかろうか。

でも、その場所が分からないから、また勘で行く先を決めて歩き始めた。早足で。


周りを威圧しながら、先を進み、しばらく。やっと目的地と思われる場所に来た。


目の前には、デカイ扉と有象無象。美琴のテンションはマイナスまで下がった。

そのまま扉越しに

「王様ぁ、()()()しましょう?」

と言うとなぜか、周りの有象無象の顔色がさらに悪くなった。

本人的には、男に媚びるステキな女をイメージしてしゃべってみたのだが、内に秘められた悪意を完全に隠せなかったようだ。


しばらくして、部屋の中から扉が開いた。こうして国王と美琴は対面した。ちなみにこの間、妨害を一切受けなかった。妨害しようとした者はみんな威圧に当てられて床と仲良くしていた。


思った通り、そこは謁見の間のようだった。国王は玉座にいる。

美琴はカッコつけてカーテシーをした。スカートが短いから、あまり様にならなかったけど。そして、開口一番に


「この世界から見て200年ほど前に私のご先祖様がやって来たと思うのですがぁ、この召喚はどういうことでしょう?ご説明願えますかぁ?」

と一国王に対して、かなり失礼な態度で言った。

国王はサーと青い顔になって黙り込んだ。


そう、一族の巫女は一度この国を訪れている。もちろん、召喚された被害者を連れ戻しに。その時は、色んな意味でヤバかった。召喚の頻度が多くて、被害者が多いのにもかかわらず、生存者がほとんどいない。生きていても生きているのが不思議なくらいにボロボロだったと記録されている。


で、当時の国王ときちんと()()()して文書を交わしたのだ。


美琴は、今度は懐から紙を出した。ずいぶんと古めかしいそれは、


「200年前に交わした文書をお持ちしましたわ。こちらの方の頭の中は、ずいぶんとお粗末な様ですしぃ、できれば使いたくなかったのですがぁ…。仕方ありませんわねぇ。自業自得ですぅ。まぁ、死にはしないと思いますので、そんなに悲壮な顔しないでくださいなぁ。」


国王の顔はもはや紙のように白かった。


文書の内容はこうだ。

一つ、これから先、絶対に召喚をしない。

一つ、召喚の研究もしない。

一つ、黒髪黒目の人間を差別しない。

もし、一つでも違えたら、その時、その場にいるであろう被害者の恨み、つらみを以って呪詛をばら撒く。


「召喚に関する資料も施設も全部破壊したと記録に残されていたので、なぜ、召喚できたのか不思議だったのですけど、教えてくださるぅ?」

美琴は国王に対して威圧を強め、その場に這い蹲らせて問いただした。ちょっといたぶりもした。けど、国王は頑として口を割らなかった。

「まぁ、良いでしょう。200年前から、今まで召喚を行ったのは今回のみ。被害者は一人。前回と違って国中に呪詛をばら撒くには力が足りませんのでそこは安心してくださいなぁ。でも、王家直系とそのゆかりの者たちの血筋を断つくらいの呪詛はできそうですぅ。」


国王はガタガタ震えながら、神にすがろうとした。


「無駄ですわぁ。200年前にこの世界の神の弱みを握りましたからぁ、誰も助けてくれませんわぁ。」

そう言って、国王を絶望の淵におとしいれた。

その後、さっさと呪詛をかけて王城を後にする。そして、まっすぐ神殿に向かい、神に釘を刺したのだった。

この間、邪魔する者は誰もいなかった。


少女を連れて界を渡るとそこには巫女仲間たちが数人集まっていた。ちょっと時間がかかりすぎたようだと反省する。


そんな美琴の考えを読んだかのように

「一時間も経ってませんよ、美琴様。お疲れ様でした。さ、そこの少女の記憶改竄を済ませてしまいましょう。」

と六条薔薇(そうび)という少女が言う。他人の記憶に干渉するのが得意な美琴と同い年の巫女だった。美琴はそういうのが苦手だったので、黙って薔薇の仕事を見た。


「終わりました。後はおまわりさんに任せましょう?誰か呼んできて!」


しばらくして、他の巫女がおまわりさんを連れてやって来た。その様子を物陰から見守る。鳥居の前で眠る少女はしばらく起きそうになかった。


美琴は巫女たちを連れだって帰宅するべく歩き始めた。

「ミヅキ様はしばらくこちらに手を貸せないと言っていました。私もそんなに手伝えなくてすみません。」

「そんなことないわ。現場周辺に結界張ったり、記憶の改竄したり、色々してくれたじゃない!それだけでも助かっているわ。でも、術式の解析もしてくれるともっと助かるわ。」

薔薇は少し考えてから、

「…あやめを呼びましょう。」

と言った。


そんなこんなでまた一人、人知れず被害者を救出したのだった。

件の神集いから、約一年。事件の収拾はまだまだつきそうになかった。


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