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第一次異世界大戦 裏話〜かの半神は暗躍す〜  作者: 一青アリア
その神の本業
15/31

自衛隊は、災害派遣がなくたって何かかしら問題を抱えて存外忙しくしてるということ

その日、彼女は外務省の官僚の訪問を受けていた。上官の付き添いだったけど。


ここ近年、というか、もう十年、二十年経つのかもしれないが、領空侵犯に領海侵犯の頻度は多くなる一方で航空自衛隊も海上自衛隊も気の抜けない日々を送っている。

で、陸上自衛隊はどうなのかといえば、


「PKOの打診ですか。最近、アフリカに行ったばかりですよね。またですか。相変わらず外務省も人使いの荒いことで。」


と言うと、目の前にいる直属の上官は

「まぁ、仕方ない。彼らは自衛隊の神話を有効活用したくてうずうずしているのだから。幸い、こちらの希望を少しは聞いてくれるそうだから、君も立ち会いなさい。横槍は得意だろう?」


それは、彼女が人事交流人員の教育の旅から戻って数ヶ月経ったある日のこと。


外務省は分かってない、と思う。PKOで派遣されるということは指揮権が国際連合に委ねられるということで、自衛隊上層部や日本政府の命令でも、そう簡単に撤退ができないということを。いや、分かっていてやっているのだろう。今まで神話が崩されることがなかったから。誰も殺さず、派遣された全員が生きて帰還してきたから。


だけど、もう限界の時は近いと思う。

海外で、日本人が殺された。イスラム過激派の仕業だった。"イスラム教徒は日本人に手を出さない"そんな幻想が壊された。それを抱かせてしまったのは自衛隊だった。

PKO派遣先は、中東になりそうだ。国民に変な幻想を抱かせたツケを払う時が来るかもしれない。犠牲者が出ない保障はない。今までもなかったけど、可能性が低くなった。

それでも、足掻くくらいは許されるだろう。かの紛争地帯で"安全地帯化"できる可能性が少しでも高い地を指定することくらい。生き残れる可能性が高い人員を選出することくらいできるはずだった。全ては陸上幕僚監部の頑張り次第。

さしあたっての情報収集。まずは同盟国軍に連絡を取ることにする。何か収穫があれば良いのだが。


そんなこんなで時は過ぎ、外務省と交渉に交渉を重ね、なんとか思い通りの場所に人員を派遣されることが決まった。人員構成は、陸上自衛隊 第12旅団、第9師団の混合編成。派遣人数は今回、公開されないことになっている。自衛隊の神話…"紛争地帯の安全地帯化"は派遣される者たちの手腕にかかっているけど、生きて帰還してくれるならあとはどうでもいいと思ってしまうのは、自衛官としては失格かもしれなかった。


日々繰り返される、領空侵犯と領海侵犯…。その対処で忙しい航空自衛隊と海上自衛隊の代わりにPKO派遣の人員を捻出するのは陸上自衛隊の役割になりつつある。

そんな中で作られてしまった神話が、実はかなり危ない綱渡りの上に成り立っていたことを知っている人間は存外少ない。

今までも、これからも派遣先で危ない目にあったことなど国民に伝えるつもりはさらさらない。闇に葬る気、満々なのである。


ある人は言う"自衛隊とは、少々自己犠牲精神の過ぎる人の集団なのではないか"と。

自衛官たちは、知らない。一部の人からそんな風に思われているなんて。彼らはただ、職務を忠実に遂行しているだけである。


本条ミヅキ一等陸佐はふと思った。

"現在、PKO派遣のみに頭を痛めていていられる陸上自衛隊が一番、平和に浸れているのではないか?"と。

もう、その年は大地震でも起こらない限り、雪害以外での災害派遣は無さそうだった。


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