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しばらくして。


僕の涙は止まり、感情も落ち着いてきた。



「・・・失礼しました」


「いいんだ。これも愛するクルトのためだからな」


「・・・」


「耳まで赤くなって、照れているのか?可愛いな」



さらにギュッと胸に顔を押し付けられる。


少し息苦しかったが、我慢した。


苦しさよりも、気持ちよさが大きかったから。



「・・・」


「クルトが私に甘えてくれているのが嬉しいな。今までそんな人はいなかったのだろう?」


「・・・はい」


「ふふ、私を抱きしめてくれているのも嬉しい。しかもこんなに強く」



言われて、途端に恥ずかしくなり、リイム王女を抱きしめている腕を解放した。


リイム王女は僕を抱きしめたままなので、少し体が空いたくらいだったが。




「恥ずかしがることはない。ここには私とクルトしかいないのだぞ」


「・・・いや、その」


「初々しいな。こう、愛でたくなってしまうな」



またギューッと強く抱きしめられる。


今まで生きてきた中で、こんなに温もりを感じる幸せは無かったはずだ。


・・・悲しいことにね。










それからまたしばらくして、二人とも立ち上がった。


僕はエルフの国に行くことに決めた。


リイム王女のため、と言ったら他力本願的になってしまうが。



エルフの国への興味。


僕に愛情を注いでくれるリイム王女への興味。


これからのことが決まっていない無計画さ。




これらを考えると、エルフの国に行くことが今最も最善のことだと考えた。



なるようにしか、ならないんだ。


運命や宿命なんて、命を授かったときに決まっているのだから。










とりあえず、流れに逆らわずに生きてみて、それからまた考えよう。













「・・・エルフの国に連れて行ってくれますか?」


「そうか、ありがとう」


「・・・いえ、僕の方こそ、途方に暮れていた所を拾ってもらったようなものですから」



僕の言葉を聞いたあと、リイム王女はムッとした表情になった。




「クルトじゃなかったら、私の国に誘っていなかったぞ」


「・・・え」


「私はクルトだから、迎えに来たのだ」


「・・・あ」



リイム王女は、少し不機嫌な様子でそう言った。


僕はなぜ機嫌が悪くなったのか最初は分からなかったが、少し考えて理解した。


そうだよね。


好きな男だから、迎えにきたんだもんね。




「・・・すみません、言葉に配慮がありませんでした。リイム王女のことをもっと知りたかったというのが、本音です」


「それは真か?」


「・・・はい。僕も男ですから。リイム王女のような綺麗な女性にこれほどまで想われていたなんて。これで断ったら男がすたります」


「クルト・・・」



がばっと抱きつかれる。



「私はクルトから見て綺麗なのか」


「・・・正直、すごく綺麗だと思ってます」


「嬉しいぞ。剣を磨きすぎて、女としての私がくすんでしまっていたら、と思っていたんだ。安心した」


「・・・リイム王女」




さぁ行こう、と僕の手を引いてリイム王女は歩き出した。


歩幅を合わせて、リイム王女と並んで歩く。


僕が歩幅を合わせていることを知ったリイム王女は、微笑んでくれた。


・・・その笑顔にドキッとしたのは内緒。

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