僕の彼女は…。
僕の彼女は変わってる。
そんな彼女と僕の日常は…。
いつもの通学路。
いつもの田んぼ道は相変わらず人がいない。
貸切な気分で歩くと、頬に当たる風も心地良い。
「来月の誕生日は一緒に祝えるからね。」
付き合い始めて初めてのイベントで張り切る僕に、満面の笑顔で彼女は言った。
「うえっへっへっ!」
何故か両手を「お化けがでたぞぉ!」とでも言いたげに手招きする様に折り曲げ、膝を使い体を上下に動かしながらの親父笑い。
凍りつく僕と気付かない彼女。
「待って、ちょっと待って。」
「どうしたの?」
「今のはダメだと思うんだ…。」
そんな僕の言葉に首を傾げる姿は…自分が何をしたのか自覚がない事を伝えてきた。
「思い出して?ほら、脳内で巻き戻して見て…。何か感じない?」
「…喜び?」
「え!あれが!?…うん、喜び?え?本気?」
こんな感じだったのに?っと少しオーバーに真似をすると、自分が何をしたのか気付いた彼女が赤面しつつ反論してきた。
「た、確かに変な笑い方はしたかもしれないけど、ガニ股はしてない!」
「反論するのソコなの??」
思わず見つめ合うと自然に笑いが込み上げてきた。
僕の彼女は嬉しいと「うえっへっへっ」と笑うらしいと脳内にメモをする、次は反撃したいものだ。
「どこ行こうか?」
「一緒なら何処でも楽しいからなぁ…。あ!リス!リスを見に行こうよ!もっふもふしたい!」
両手をワキワキしながらニヤける姿にも慣れてきた。
「わかったよ。わかったら…その手を止めなさい。」
「痛い!顔を掴むのやめてぇ!!」
僕の右手も慣れてきた。最近は避けられる前に掴める様になってきたしね。
「そういえばさ。本当は君の事を手の平で転がせる女になりたかったんだけど私には無理みたいなんだ。」
「え?突然?…うん、無理そうだよね。」
「でしょ?だから1日一回は君を笑わせられる様に体をはろうと思うんだ。」
目の前でドヤ顔をする彼女の気持ちがわからない。
きっと小さい頭で沢山考えた結果なんだろうけど…。
「笑うと元気でるでしょ?女子力とか手に入れられないし、夢見がちな君の彼女像とか再現できないから、それは諦めてね?せめて笑いをとるから!」
「あっ、そっち方面にいっちゃうの?」
「でもなぁ〜。ボケとツッコミを1人でするのって大変なんだよ…。私がボケで君がツッコミとかなら分かりやすいんだけど…ピン芸人って実は天才じゃないのかって最近は思うんだよね。」
悩ましげにため息を吐きつつ空を見上げる君の姿に、僕はそれがネタなのか素なのか悩んでしまい、ツッコミ不在の状態になってしまっている。つらい。
「君って変わってるよね。」
「そう?笑ってる姿が好きだから毎日みたいってのが本音だけどね。」
照れながら笑う君が可愛くて僕の顔面が仕事しなくなったらどうしよう?なんて考えてる時点で僕も変わってるのかもしれない。
いつもの通学路。
いつもの田んぼ道は僕らの貸切。
ぎこちなく繋がった手と隣で笑う君がいたら、もしかしたら僕は最強かも…なんて恥ずかしくて言えない。
「ね〜!何か最強な気分かも!」
ふふんふーん!っと鼻歌を歌いながら繋がった手を大きく上下に動かされる。
思わず大笑いしてしまった僕に、つられて笑う君。
一緒にいると似てくるんだね。
僕の彼女は変わってる。
そんな彼女と僕の日常は…いつも幸せに包まれてる。