第七章「謎の男」
「ちょっとなによこれ・・・」
ミントは怯えながら急いで俺のとこまで飛んできた。
「何かトラップばっかだな・・・」
「そうね・・・」
ざっと五、六匹程度だな。
少し念じれば俺の手には刀が握られていた。
「行くぜ」
俺はゾンビのうちの一匹を真っ二つに斬り裂いた。
激しい腐敗臭とドロドロした赤い体液。
俺は自分にかからないように避けた。
「ゾンビの返り血なんて飛ばさないでよ!」
「かかんないように避けとけよ」
俺が二匹目に斬りかかった時だった。
ガッ!
何かが俺の足を掴む。
「なッ!?」
さっきのゾンビだった。
右半身と左半身にわかれているというのに右半身の腕が俺の足を掴んでいる。
「き、気持ち悪・・・!」
俺は慌てて刀を俺の足を掴んでいるゾンビの頭に刀を突き刺した。
クチャ!
骨まで腐敗しているらしく刀で簡単に貫くことが出来た。
脳をやられたそいつは俺の足から手を離した。
「よし」
しかし、そうこうしている間に他のゾンビに囲まれてしまった。
「な・・・!」
ゾンビ達が少しずつ近づいてくる。
臭い。
せめて一匹分だけでも開けば抜けられるんだが・・・
「このっ!」
ゴン!
ゾンビの頭に何か硬いものがぶつかる。
さっきの宝石だった。
「ミント!」
ゾンビ達の視線が一斉にミントに集まる。
今だ・・・!
俺はゾンビのうち一匹の首を刀で斬った。
そしてそのまま勢いで他のゾンビの首を斬った。
ボトボトボトボトボトッ!
ゾンビの首がまとめて地面に落ちる。
「う・・・あ・・・!?」
ゾンビ達の体はその場に倒れた。
首のあった部分から体液が流れている。
「よし、戻るぞミント」
「うん」
俺は落ちている宝石を拾って来た道を戻った。
要は迷っていた。
前回に引き続き。
「ちょっと・・・疲れた・・」
要はその場に座り込んだ。
「うむ。少し休んだ方が良いかも知れぬな」
その時だった。
ザク
「・・・!?」
要の顔の横に細い剣が突き刺さる。
「だ、誰!?」
「おや、外してしまったか・・・。暗くてよく見えない」
男の声だった。
甘い声。
「要ッ!」
ベルゼブが叫ぶと同時に要はその場から立った。
「そう構えなくて良い。殺しに来ただけだから」
「誰・・・!?」
「同じ質問をするのは・・・あまり賢明ではない。一度目で答えなかった質問に・・・」
男は剣を壁から抜いた。
「二度目で答えるとでも思うかッ!?」
ヒュッ!
風を切る音がして、男が剣を振り上げた。
「ッ!」
音で気づいた要は大剣を出現させ、ソレを防いだ。
ガァン!
「良い反応だ要」
「あたしの名前・・・!」
「知っているわけではない。君の肩の男がそう呼んでいたからね・・・」
グググ・・・!
要は男の剣を押し返そうと力を入れた。
「やぁッ!」
ガァン!
男の剣を弾き、要は男に蹴りを入れた。
正確には入れたつもりだった。
しかし要の足は空を蹴るだけだった。
「え・・・!?」
いつの間にか耳元にかかる吐息。
「遅いな・・・」
男は要の隣にいた。
「さよなら」
ブン!
剣が要に振り下ろされる。
ザン!
要の肩から血が流れる。
幸い、斬られたのは左肩。
右肩に乗っていたベルゼブは無事だった。
「要!」
「だ、大丈夫・・・」
「殺し損ねたか・・・。じゃあ・・・」
「もう一度ッ!」
要は剣を避けた。
そして大剣を振り上げる。
「やぁぁぁぁッ!」
ズドォォォン!
地面が浅く砕ける。
やはりそこに男はおらず、背後には男の気配があった。
「美奈」
「何だ?」
突然深刻な顔をしてミントは話しかけてきた。
「嫌な予感がする」
「またトラップか?」
「違う。要に・・・何かあったのかも・・・」
「要に何かあったんならベルゼブにも何かあるハズだ・・・。俺は何も感じないぞ?」
「アンタは鈍いからダメよ」
鈍いのか・・・?
俺って・・・。
「とにかく急ぎましょう」
「そうだな」
流石に少し、俺も嫌な予感がした。
さっきまでゆっくり歩いていたが、自然と小走りになる。
ベルゼブはともかく要が心配だ。
「美奈、アレ!」
ミントの指差す方向に二つの人影。
一人がもう一人の背後に立ち、剣を持っている。
背後の立たれている方の人影の肩にはもう一つの人影。
ミントの明かりだけが頼りだから遠くてよく見えない。
が、これだけはハッキリしている。
「要が危ねえッ!」
こっからじゃ間に合わない。
なら・・・!
俺の右手には刀が握られていた。
「ちょっと何する気!?」
「要の後ろの奴にコイツを突き刺すんだよ」
「無理よ!」
「こうみえても・・・」
俺は刀を紙飛行機のように持ち、後ろの奴に向けた。
「投擲には・・・」
「自信あるんだぜッ!」
ビュッ!
刀が飛ぶ。
要に剣が振り下ろされるコンマ一秒前。
ザクッ!
後ろの奴の肩に刀が突き刺さる。
「がぁッ!」
遠くからでも聞こえる声で後ろの奴がうめく。
「ヒヤヒヤさせないでよ!」
「結果オーライだ。行くぞ」
俺は要のところへ走って行った。
続く