第五章「戦う力」
歩くこと数十分。
到着。
いかにもRPGの最初のダンジョンみたいな雰囲気をかもし出している洞窟の前に俺達は来ていた。
「なんというか・・・・。ダンジョンって感じだな」
「そうだね。何かあるかもしれないし・・・。中、入ろう?」
「そうだな」
要を先頭に俺達は洞窟の中へ入っていった。
薄暗い。
火でもあれば助かるのだが・・・。
「要、何か火ないか?」
ないとはわかっていてもとりあえず聞いてみる。
「ん・・・。火はないね。ミント、何かできる?」
「一応光ることができるけど・・・」
「じゃ、光って」
あたり全体が明るくなったわけではないがマシになった。
「ありがとな、ミント」
「か、要に頼まれたから光ってるだけなんだからね!勘違いしないでッ!」
勘違いなんかしてないつもりなんだが・・・?
ミントのおかげで洞窟の中が見渡せるようになってはきた。
目が慣れたせいもあるだろう。
ふと足元を見ると頭蓋骨等が落ちている。
妙に不気味だ。
「この骨・・・。この洞窟に入った人達の物かな・・・?」
要が少し怯えた様子で言う。
まあそう考えるのが妥当だろう。
「美奈」
「ん?」
「何かいるぞ」
ベルゼブが真面目な顔で言う。
「何かって・・・何?」
「何かだ」
会話になってないような気もする。
いきなり意味不明な世界に来てしかも何故か女になった俺ならちょっとしたことじゃ驚かないぞ。
もう十分驚いたからな。
ドシン・・・!
「足音が聞こえるぞ」
「きっとクマさんだよ」
頭大丈夫か要。
「ベルゼブ」
「む?」
「お前の言う何かってアレか?」
洞窟の奥から巨大な何かが歩いてくる。
「まあな」
嬉しげに答えんじゃねえ。
「わあ、おっきなクマさん」
要、ホントに大丈夫か?
「要」
「何?」
「棍棒持ったクマさんって見たことあるか?」
「ないよ」
「じゃあ何でお前言うクマさんは棍棒握ってんだ?」
「きっとアレで蜂の巣をつついて蜂蜜を食べてたんだよ」
どこの○ーさんだ。
巨大なクマ?はどんどんこちらに近づいてくる。
もうしっかりとその姿を確認できる。
わかってはいたがクマじゃない。
「要、蜂の巣つついてた棍棒に血がついてるのはなんでだ?」
「蜂の・・・血?」
蜂の体液は赤くなかったハズだぞ要。
「トロールだな」
「トロールだね」
そこのパートナー二人、勝手に納得すんな。
緑色の肌。
毛のない頭。
アメリカの太った中年男性のようにでっぷりした腹。
右手に握られた蜂の体液(と要は思っている)のついた棍棒。
殺意ギンギンの目つき。
マンガや映画でしか見たことなかったが・・・。
トロールって奴らしい。
「うぉぉぉぉぉぉッ!」
トロールは唸ると棍棒を振り上げた。
「ちょ・・・ッ!」
ドスン!
この洞窟、奥に行けば行くほど横幅が広くなっている。
おかげで横に避けることができた。
「すごいよ美奈ちゃん!トロールだよ!」
クマさんはどうした。
「ベルゼブ。どうすりゃいいんだ!?」
「戦う他なかろう」
逃げるんじゃなくて?
「要、戦えるか?」
「もちろん!」
いつのまにか要の手には大剣が握られていた。
トロールはまたも棍棒を振り上げる。
「やぁッ!」
振り下ろされた棍棒を大剣で防ぐ要。
グググググ・・・!
「うぉぉぉぉぉッ!」
「力・・・強いよコイツ・・・・!」
当たり前っちゃ当たり前。
「おいベルゼブ俺にも何か出せないのか?」
「知らん」
またそれか。
もう帰れよお前。
「冗談だ」
タイミング考えて言えよ冗談は。
「ココは夢幻世界だ。イメージが武器となる」
「イメージするのだ美奈。お前にとっての力を」
イメージ・・・ねえ。
少し考える。
「も、もう無理・・・かもッ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
トロールは棍棒を振りなおした。
ガァンッ!
「きゃッ!」
あまりの力に要の手から大剣が離れる。
「うぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁッ!」
トロールはもう一度棍棒を振り上げた。
「ヤバッ!」
ザンッ!
「うぉ!?」
半分になる棍棒。
上半分が要の隣に落ちた。
「ふむ。中々の切れ味だな美奈」
「だろ?」
俺の手に握られているのは刀。
時代劇等でよくみるあの日本刀だ。
「行くぞ・・・ッ!」
俺は日本刀を構えなおした。
ザクッ!
俺はトロールの腹に日本刀を突き刺した。
流れる赤い体液。
日本刀をつたい、地面に滴り落ちる。
「うぉ・・・・」
俺は勢いよく刀を腹から抜いた。
ドシィィィィィン・・・!
その場にトロールは音を立てて倒れた。
「よし」
「すごい!美奈ちゃん!」
もう必要ない、と感じた途端刀は消えた。
「あたしの剣にはないよそんな切れ味!」
妙に興奮してるな要。
「美奈、これからはその刀で戦うといい。この夢幻世界では戦うような状況になることは少なくない」
「了解」
「じゃ、行こうよ」
「おう」
俺達はトロールの死体をまたいで先に進んだ。
続く