第四章「要」
ここから消えたい
くだらない世界
つまらない世界
ここから消えたい
死にたくなるような同じことの繰り返し
世界は変わらない
それなら私が変わろう
くだらない、つまらない世界から抜けるために
この私が変わろう
要
「ちょ、どこまで走るんだよッ!」
俺は謎の少女に手を引かれ、必死にペースを合わせて走る。
「変な植物のいないところまで!」
一応納得。
ベルゼブは一所懸命に俺の肩を掴んでいる。
落ちるなよ我がパートナー。
「このへんでいいかな・・・」
ピタリと少女が止まった。
巨大な樹。
これまでにこの密林で見た樹の中でも一番巨大だろう。
その樹の周りには細かい草しか生えていない。
まるでその樹を避けるかのように他の樹は離れた場所に生えている。
「この樹・・・大丈夫なのか?」
「一応ね。あたしが最初にいた場所だから大丈夫」
最初に?
妙なことを言うなこの少女。
恐らくこの少女も俺、及び世界のみなさんの妄想の産物だと思うんだが・・・。
「それにしても困ったなぁ。こんな密林であたしが何をやればいいのよ」
・・・・・・!?
「おい、ベルゼブ」
俺は少女に聞こえない程度の小声でベルゼブに話しかけた。
「む?」
「あの娘・・・。俺と同じじゃないか?」
「状況がか?」
「ああ」
「何話してんの?」
「うわッ!」
突然少女に話しかけられた俺は驚いて声を上げてしまった。
「もしかしてあなたも突然夢幻世界に来ちゃった人?」
「ま、まあ・・・」
「やっぱり!あたしそんな気がしてたんだよねー!」
無駄に元気だな。
「名前なんていうの?」
「え、えっと・・・。美奈」
「美奈・・・か。良い名前だね」
初めて名前を褒められた・・・。
もちろん現実世界で自己紹介した時も含めて。
初めて褒められたよ・・・。
「あたしは要。呼び捨てでいいよ」
要と名乗る少女はニコリと笑った。
服装は俺とは違ってセーラー服。
そしてまた俺とは違って短めの髪。
身長は今の俺と同じくらいだろうか・・・。
顔は綺麗というよりかわいいといった感じだろうか。
顔だけでも活発そうなイメージがある。
「由愛って子のこと、何か知らないか?」
「あたしも会ったけどよく知らない・・・」
「ゲームっていってたけど何をすれば良いんだ・・・?」
「それはあたしもわかんないだけど・・・・・・・」
「なんとかして由愛に会わないとな」
「そうだね。もしかしたら由愛ちゃんを探し出すっていうゲームじゃないかな?」
一理ある。
確かにそれならこの状況にも多少説明がつく。
「要〜」
誰かの声が聞こえる。
「ミント、何かわかった?」
「この近くに洞窟があるよ」
「洞窟かぁ・・・」
気づけば要の周りを妖精的な何かが飛んでいる。
ティンカーベルみたいな奴だ。
「む」
「どうしたベルゼブ」
「パートナーのようだな」
「あの妖精みたいのがか?」
「ああ」
「あ、紹介してなかったね。この子はミント。あたしのパートナー」
と、要は妖精的な何かを指差す。
我が渋いパートナーベルゼブと違ってかわいらしいなおい。
少しだけうらやましい。
「俺も紹介してなかったな。コイツはベルゼブ」
俺は肩に乗っているベルゼブを指差した。
「よろしくね。ベルゼブさん」
「う、うむ・・・」
ベルゼブは要に話しかけられ、少し赤くなっている。
って何でだよ!
俺の時は普通じゃん!
肩にまで乗ってるくせに!
まあ別にどうでもいいか・・・。
「ミントが言うにはこの近くに洞窟があるらしいからそこに行ってみない?」
「何で?」
「冒険したいじゃん」
そこは何かあるかもしれないと答えて欲しかった。
それじゃまるであんま目的がないみたいじゃねえか。
要の無駄な陽気さに少し不安を覚えながらも俺達は洞窟へ向かうことになった・・・。
続く