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第二章「由愛」

落ち着け。

落ち着け俺。

夢だから。

大丈夫だから。

女になっても大丈夫。

多分。

俺は鏡に映る少女(俺?)をまじまじと眺めた。

あ、以外とかわいい。

「自分じゃなかったら惚れてるぜまったく」

俺はため息をついた。

やはり鏡の中の美少女もため息をつく。

俺は改めて自分の体を見た。

どうみても俺じゃねえよ。

しかし実際のところ自分である。

「夢にしちゃ感覚がリアル過ぎないか・・・」

俺は今までに何度も夢を見たがこんなにリアルだったことはない。

あ、明晰夢だからか。

俺は勝手に納得することにした。

「とりあえず元に戻るか。夢なんだし」

俺は自分が元の姿に戻るよう念じた。

さっきは鏡が出たのでこれでいけると思った。

「ん・・・・」

足元はスースーしたまま。

つまりまだスカート穿きっ放し。

未だ寂しい股間の感覚=戻ってない。

「何でだよ」

「何で元に戻らないんだよー」

半分諦め気味の俺。

「元に?それが最も本質に近い姿のハズだ」

「!?」

どこからか男の声がする。

低い・・・ってか渋い。

「誰だ!?ってかどこだ!?」

俺は辺りを見回した。

誰もいない・・・。

「ココだ」

下から声がする。

「・・・」

俺は下を見て絶句した。

人・・・か?

小さな男が俺を見上げている。

渋いおっさんの顔。

体つきは良さそうだが小さいからよくわからない。

そしてコートを着ている。

「お前か・・・?さっき話しかけたのは」

「他に誰がいると言うのだ」

「誰だよお前」

「私か?私の名はベルゼブ。お前のパートナーだ」

「ぱーとなー?」

意味がわからない。

いや、パートナーという言葉の意味がわからないんじゃなくて・・・・

「何だ貴様知らんのか?」

「知ってるわけがないだろミニマムおっさん」

「その様子だとこの世界についても知らぬようだな」

「夢だろ?」

俺はミニマムおっさん(ベルゼブ)を鼻で笑った。

俺の妄想の産物のくせに生意気だぞ。

「ふむ。知っている方が珍しいかも知れんな」

「まず。この世界はお前の夢ではない」

「は?」

多分今俺すっごい間抜けな顔してた。

「ココは夢幻世界むげんせかいと呼ばれる世界」

「お前の住んでいる現実世界と平行して存在するもう一つの世界」

あーハイハイ異世界ね。

夢にしちゃ設定のクオリティ高いじゃん。

「もとより夢とは現実世界から一時的に魂が離れ、夢幻世界に来てしまう現象のことだ」

おお、なんかいいじゃん。

流石夢。

「元々夢幻世界でココが夢幻世界だと気づくことは稀にしかない」

じゃあ俺すげーじゃん。

「そしてこの世界では自分の魂の本質に最も近い姿となる」

じゃあ俺の魂本質美少女かよ。

悪くはないがそれはそれでどうかと思う。

「夢幻世界がどーのこーのってのはわかった」

「うむ」

「お前は何者なんだ?」

「さっきも言ったであろう。お前のパートナーのベルゼブだ」

もうわけがわからない。

夢幻世界?

パートナー?

どこのライトノベルの話だ?

この状況。

この姿。

そしてベルゼブの存在。

その全てが夢で片付けるには難しかった。

「ベルゼブ」

「何だ?」

「何で俺はココが夢幻世界だと気づけたんだ?」

「さあな。気づけてもすぐに現実世界に戻るケースが多いからな。これだけ滞在できるのには何か意味があるのだろう」

まあそりゃそうだろ。

「で、いつ帰れるよ?」

「知らぬ」

「知っとけよ」

「知らぬものは知らぬ」

役に立つんだか立たないんだか・・・

「ハァ・・・」

俺がため息をついた時だった。

『ユメ・・・』

「は?何か言ったかベルゼブ」

「何も言ってないぞ」

『ユメ・・・』

幼い少女の声がどこからか聞こえる。

「そーだよなー!お前みたいなおっさんがこんなかわいい声のハズないもんなー!」

『アイニキテ・・・』

「誰に?どこへ?ハッキリ喋らんかいッ!」

『ワタシノセカイ』

今まで白いだけだった世界が変動し始める。

「な、何だ!?」

「む!?」

ベルゼブは俺の脚を上って肩に乗った。

「何乗ってんだよ」

「パートナーだからな」

「勝手にしろ」

気がつけば世界は変わっていた。

小さな女の子の部屋のようだった。

クマのぬいぐるみ等のファンシーグッズがところせましと並べられている。

「ねえ、遊ぼう?」

「ッ!?」

突然、背後に気配がした。

「お姉ちゃん。来てくれてありがとう」

「誰だ・・・?」

「私は由愛ゆめ。この夢幻世界をし・・・し・・・えーと・・・・」

由愛は言葉に詰まって考え込む。

「支配?」

「そう!しはい!この夢幻世界をしはいしてます!」

嬉しげに大変なことをカミングアウトすんな。

「支配だと?この夢幻世界には支配する者などいない」

肩でベルゼブが喋っている。

「でもおじさん。残念だけど私がしはいしてるの。ホントだよ?」

「たわけが。貴様のような小娘にこの夢幻世界を支配するほどの力があるわけがなかろう」

「ふーん。信じないんだ」

そういうと由愛は表情を一転させた。

「むッ!?」

「どうしたベルゼブ?」

ベルゼブの様子がおかしい。

「私の・・・私の体が・・・!」

「な!?」

ベルゼブの体が足元から消えていく。

「あははははッ!おじさん消えちゃえば?」

由愛は嬉しそうに笑って・・・っておい!

笑ってる場合か!

「貴様か小娘・・・ッ!」

「小娘じゃなくて由愛。おじさんこのままじゃ消えちゃうよ?」

「く・・・ッ!」

ベルゼブの体はもうほとんど消えている。

そして首まで消えた時だった。

「なーんちゃって♪」

由愛がそう言った瞬間、ベルゼブの体が元に戻った。

「・・・!」

「そういえばお姉ちゃんさあ。現実世界に帰りたい?」

「あ、ああ」

由愛はニコリと笑った。

「じゃあさ。げーむしよう?」

「ゲーム・・・?」

「簡単だよ。お姉ちゃんが私を見つければお姉ちゃんの勝ち。見つけられずにお姉ちゃんが死んだら・・・」

生死を伴うのかよ。

「現実世界と夢幻世界をゆ・・・ゆ・・・」

「融合か?」

「そ、そう!ゆうごう!」

「ゆうごうさせちゃうからね!」

ホントに意味わかってんのかこの子。

「じゃあ、ゲームスタート!」

パチン!

由愛が指をならした。


続く

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