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第十九章「リベリア」

「お姉ちゃんさあ、現実世界に帰りたい?」

「・・・」

口ごもるセーラー服の少女を私は上から見つめる。

「お姉ちゃんもあの世界が嫌いなの?」

「それは・・・!」

まだよくわからない・・・といった様子だった。

「とりあえずさ、げーむしよう?」

「ゲーム?」

「うん。さっき説明したでしょ?お姉ちゃんが私を見つけられたらお姉ちゃんの勝ち。見つけられなかったら現実世界が大変なことになるんだよ?」

「・・・」

「あの世界が嫌いなら私を見つけなければ良いし、あの世界にまだ戻りたいと思うなら頑張って私を見つければ良いんだよ」

「・・・。わかった」

「そういえばお姉ちゃんさ、名前ある?」

「え・・・?なくはないけど・・・」

「私がこの世界で暮らすための新しい名前を上げる♪」

「新しい名前・・・?」

かなめでどうかな・・・?要お姉ちゃん♪」

「要・・・・?」

「そう。前の自分なんて捨てて新しい自分、要としてこの世界で暮すの」




そこで映像は途切れた。

気がつけば元いた場所に戻っている。

「リベリア・・・!」

「どうだった?」

「どうだったも糞もねえ。お前はただの被害者じゃねえか!」

「そうかな・・・」

「由愛、支配も融合もやめて普通に暮らすんだ。お前が望んだのは現実世界とこの世界の融合なんかじゃなかったハズだ」

倒れたままの由愛の目から涙が溢れる。

「そう・・・だよね・・・違うよね・・・。どこで間違っちゃったんだろう・・・私・・・」

「間違いは正せる。まだ取り返しのつかないことにはなってない。間違いだと気づけた時点で正せるんだ」

「ありがとう・・・お姉ちゃん・・・」

俺は泣きじゃくる由愛の身体を抱き上げ、その場に立たせた。

「斬ったりして悪かったな」

「ううん。悪いのは私、止めてくれてありがとう」

「礼には及ばねえよ」

そんなことより・・・。

「リベリア・・・・ッ!」

俺が語気を荒げたせいか、横で由愛がビクつく。

「いるんだろ・・・ッ!?どこかで見てんだろ・・・!?こんの糞野郎がァ・・・・ッ!」

「糞野郎だなんて・・・。口の悪い女の子だ」

慌てて振り返れば、そこに奴はいた。

左目を隠すようにわけた前髪、額の右あたりに生えた角、背中にはコウモリのような羽、爬虫類のような尻尾。

間違いない。

コイツが・・・!

「リベリアッ!」

由愛が叫ぶ。

「ダメじゃないか由愛。負けたりしちゃあ」

「聞いてリベリア!私は・・・」

ズボッ!

リベリアは右手を由愛の身体に突っ込んだ。

「え・・・?」

「ああ、いいよ、説明しなくて・・・・。見てたから」

ズポリとリベリアは由愛の身体から手を引っ込めた。

ドサリと由愛はその場に倒れる。

「由愛ッ!由愛ッ!」

俺は倒れた由愛を必死で揺さぶる。

「ああ、心配ないよ。死んじゃいない。力を失っただけだから」

「リベリア・・・ッ!!」

リベリアの右手には発光する白い玉が握られていた。

「それは・・・?」

「これかい?これは彼女の力そのものだよ」

そういうとリベリアは口を大きく開け、玉を飲み込んだ。

「ああ・・・・。良い感触だ・・・。力が湧いてくる・・・ッ!」

「これで彼女の手を借りる必要はなくなった・・・。僕が、僕がこの世界を支配し、現実世界と融合させ、神となるッ!!!!!」

「させるかよ・・・!」

俺は刀を構えた。

コイツがラスボスかよ・・・!

「できるのかい?君ごときが・・・神を倒せるとでも?」

「悪いが似たような台詞を言われて勝ったばかりだからな。不可能だとは思わない」

「試してみるかい?」

「望むところだッ!!!」

ガッ!

俺の振り下ろした刀をリベリアは右腕で受ける。

なんつー硬い腕だ・・・。

「あはははははははははははッ!!!!無理無理無理無理無理無理ィッ!!!!!!!!」

ゴッ!

リベリアの左の拳が俺の腹部に食い込む。

「か・・・・は・・・ッ!」

「美奈ッ!」

「大丈夫だベルゼブ・・・・。それよりアイツのことわかるか?」

「リベリア・・・。かつて夢幻世界を支配しようとした高等悪魔だ。奴はこの世界を追放され、現実世界と夢幻世界の狭間で封印されていたハズだが・・・」

「彼女の瘴気に当てられて復活しちゃったのかもね?僕でもよくわからないんだけどさ・・・!」

そういうとリベリアは宙に浮いた。

「まずいッ!」

リベリアの周りに黒い円が現れる。

「くらいな」

ビュビュッ!

黒い物体が円から発射される。

由愛と同じ技か・・・!

一部を避け、避けきれないものを弾こうとした時だった。

ドッ!

「な・・・ッ!?」

黒い物体が背中に当たる感触・・・。

後ろから!?

「馬鹿な・・・!」

倒れかけたがなんとか膝をつくことができた。

「追尾ぐらいできないと・・・。由愛は本当に使いこなせてなかったんだね・・・」

よろめく身体を刀で支え、立ち上がる。

「美奈、リベリアのあの力は由愛のものだ。まだ完全には身体に馴染んでいないハズだ。お前でも奴と同じ方法で取り出すことができる!」

「了解。行くぜベルゼブ!」

「無駄だよ!そんな隙は僕には・・・・」

「ハァァァァァァァッ!」

ズブッ!

「ッ!?」

リベリアの身体に突き刺さる大剣。

「要ッ!」

「はやくしろッ!晃ッ!」

「要・・・?何で俺の名前・・・」

「ふざけるなよ貴様ァァァァッ!」

リベリアの腕が要の身体を貫く。

「が・・・ッ!」

「要ェッ!」

「俺のことはいい!早くコイツから由愛ちゃんの力をッ!」

「お前・・・」

「いいから早くッ!」

「要、俺さ・・・。元の世界に戻れたら真面目に授業受けようと思うんだ・・・」

そう言うと要は苦しいハズなのにニヤリと笑った。

「寝んなよ?」

「わかんねえッ!」

ズボッ!

俺はリベリアの身体に思い切り右腕を突っ込んだ。


続く

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