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第十七章「世界」

「まあゆうごうさせるというか・・・・この世界が現実世界になっちゃう感じかな」

「おい待てふざけんなよ!話が違う!」

「何が?」

心の底から不思議・・・といった様子で聞き返す由愛。

「融合させんのは俺達がお前を見つけられずに死んだらの話だろ!?」

「えー。だって飽きちゃったんんだもん。お姉ちゃん達中々来ないし」

「おま、飽きたって・・・・!」

飽きた・・・・。

実に子供らしく、単純で、わかりやすい理由だった。

「それにね、要お姉ちゃんはこっちのほうが良いんだよね?」

「な・・・!?」

要の方を振り向く。

要はやりづらそうにうつむいたまま何も言わない。

「本当なのか・・・・?」

「・・・・・」

「何で答えない!?」

「あたしは・・・」

「要ッ!」

「よせ、美奈」

語気を荒げる俺をベルゼブが制止する。

「今は言い争っている場合ではない」

「く・・・!」

俺は宙に浮いている由愛を見上げる。

実に無邪気な表情をしている。

腹立たしいくらいだ・・・。

「何故こんなことをする・・・?」

「お姉ちゃんには関係ないよ」

背筋がぞっとした。

これが幼い子供の言葉か・・・?

発した言葉は問題じゃない。

問題なのはその言い方。

冷たい、しかしその冷たさの中に怒りがこめられている。

何なんだよコイツは・・・

「あんな世界。必要ない。でも全部消しちゃうのはつまんない。だから混ぜるの。あっちの良いところとこっちの良いところを合わせて素敵な世界にするの」

何だ、良いことじゃないか・・・

って違う!

「そんなことしたら現実世界の人達はどうなる!?」

「基本的にはどうにもならないよ?私にとって邪魔な存在はどうなるかわからないけど」

「つまり融合させても支配するのはお前ってことだな?」

「そうだよ。当たり前じゃない。私のおかげで素敵な世界になるんだよ?」

「んな世界、素敵でも何でもねえ!お前がやろうとしてるのは世界の改善なんかじゃない、ただの独裁だッ!」

「うるさい」

「え?」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」

「お姉ちゃんには関係ない!ただ見ていることしかできない癖に、勝手なこと言わないで!」

「勝手なのはお前だ、由愛!」

「喋らないで!」

「それはできない!」

「何で!?何で嫌がるの!?いなくなるんだよ!?うざったい大人達も、邪魔くさい法律やルールも!」

「そんな世界、間違ってる!」

「間違ってなんかないもん!自由な方が良いに決まってる!」

「自由なだけじゃダメなんだよ!」

「わかんないよッ!」

「わかんなくても良い!いつかわかる時が来る、その時まで・・・」

「そんなの来ないよばか!」

「由愛、いい加減に・・・」

「美奈ちゃん」

不意に要が割り込む。

「あたしは、良いと思う」

「要・・・・!」

「あたしも、あの世界には飽きちゃったから。毎日が同じことの繰り返し、気づけばつまらない世界の循環の歯車にされてる。そんな世界に何の価値があるの?」

「何言ってんだ要!お前の言うことはともかく、由愛の言うようになれば世界は・・・・」

「そんなことあたしだってわかってるよ!」

「要・・・・」

「だけどね!何か変わらなきゃダメなの!」

こんなに真剣な要は初めて見た。

呆けてるようでこんな風に考えてたのか・・・。

「お姉ちゃん、どんなに言っても私がやめない限り世界の融合は止まらないんだよ?」

「ああ、そうだなそういえば」

「どうするの?」

既に俺の右手には刀が握られている。

答えは決まっている。

「力づくでも止める!」

俺は全力でダッシュして助走をつけ、由愛に向って跳んだ。

「おおおおおッ!」

キィィィィィィィィィィン!

刀が由愛の目の前で止まる。

バリアのようなもので止められているようだ。

目には見えないが確かにそこにある。

「私はこの世界をしはいしてるんだよ?例えるなら神様。神様に勝てるの?お姉ちゃんは」

「勝てる勝てないの問題じゃねえ!勝たねーといけねえんだよッ!」

ガガガガガガガガガガガガガッ!

刀とバリアのような何かがぶつかり合う。

硬ぇな・・・。

「斬れないよ。お姉ちゃんじゃ」

ガッ!

押し負けた俺は地面に着地する。

「美奈ちゃん・・・・!」

キィンッ!

振り下ろされた要の大剣を刀で受ける。

「な、何すんだよ!?」

「お願い、もう邪魔しないで!」

「要ェェェェェェッ!」

ガッ!

俺は大剣を弾き飛ばした。

「あ・・・・・!」

「絶対にさせねえぞ・・・・・・・。ココも、現実世界も守る!」

「私も同意見だ美奈」

「ありがとなベルゼブ」

俺は放心状態の要を見る。

大剣を弾き飛ばされた要は呆けた顔でこちらを見ている。

混乱して放心状態になったのか・・・・?

「ミント、要を頼む」

「わ、わかってるわよ!アンタに言われなくたって・・・」

「そうか」

俺はそれだけ言うともう一度由愛を見上げる。

「まだやるの?勝てないのに」

「同じことは二度言わねえ」

「そう」

由愛の周りに複数の黒く小さい円が現れる。

ビュビュッ!

同時に円から黒い物体が発射される。

全てが俺に向って飛んでくる。

「ッ!?」

一部は避け、一部は刀で弾いた。

その場で跳び、由愛に斬りかかる。

キィィィィィィィィィィン!

「無駄なのに」

「ベルゼブ、お前何かできるか?」

「うむ、その刀に私の力を込めるくらいだな」

「何だ、できるじゃねえか。何で今まで使わなかった?」

「疲れるからな」

そんだけかよ。

「行くぜベルゼブッ!」

「うむ!」

刀に力がこもるのがわかる。

ベルゼブの野郎、こんな力を今まで使ってなかったとはな・・・。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

パキィィィィィィィィィン!

「・・・・ッ!?」

何かが砕けたのがわかる。

由愛の表情が驚愕で歪む。

「嘘・・・」

ザンッ!

斬った感触。

俺は今この刀で・・・

諸悪の根源であり、一人の少女である由愛を・・・

斬った。

俺が着地すると同時に由愛が落ちる。

不思議なことに血はない。

振り返ってみる。

由愛の体には確かに斬られた痕が残っている。

「嘘でしょ・・・私が・・・」

「融合を止めろ」

「止まってるよ、私がお姉ちゃんに斬られたその瞬間から」

「そうか・・・・」

「なあ由愛」

「何?」

「一つ聞いて良いか?」

「良いよ」

「何でこんなことを?お前は一体何者なんだ・・・?」

「教えなきゃダメ?」

「今さら無理にとは言わねえ」

「良いよ。見せてあげる。私の記憶」

その瞬間、視界がブラックアウトした。


続く

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